ちょっとした偶然
「いいえ、ゲルハルトさんはとても優しくて大好きです。ご主人様もそうですが、失敗してよく叱られていた私を、いつも元気づけて下さいました。」
「叱っておったのはメイド長で間違いないな。」
「お母様はいつも厳し過ぎるのです・・・グスン・・・」
「あんたって子はどうしてこう、ホントにもう。」
「ゲルの影響ですね。」
「そうじゃ、奥様。あれは励ましているように見えて、サボっておっただけじゃ。」
「まあまあ、でも、ゲルさんとローサさんは、最初からとても仲がよろしかったですわ。」
「ほほほ、それはゲルハルトのお陰で、今の奥様がおられるからですよ。」
「旦那様ではなくて、でしょうか。」
「もちろん、直接的には旦那様のご決断ですが、あの日、二人が出会うことできたのは、ゲルハルトのちょっとした行いのお陰でしてな。」
「あの、お聞かせいただくことはできますでしょうか?」
「ええ、あの日はスーディルの港の視察を予定しておったのですが、朝からあいにくの雨でしてな。私が中止を判断してお屋敷に上がった時にはもう、ご出立した後でございました。雨なのでゲルハルトが気を利かせて、いつもより早く出たものでございます。」
「そう言えばそうだったなあ。」
「視察できるかどうか微妙だったが、待ってもこれ以上天候が良くなるとは思えんかったからなあ。」
「もし、いつもの時間に出発していたら・・・」
「まあ、そういうことになっていたかと・・・」
「本当に、私はあの時、神のご加護を受けていたのですね・・・」
「そうですね。でも、ローサさんであれば、神は必ずお救い下さると思います。そして、私はそのローサさんに救われた者の一人です。」
「そうだね。私もその中の一人だ。」
「あらあらまあまあ。」
「私はローサ様がいてくれて嬉しい!」
「そうじゃな。端的に言えばレミリアの言うとおりじゃな。」
「ほら、あっしのお陰だろ?」
「でも、ゲルの加護ではありませんからね。」
「おかしいなあ。あっしにゃ、酒の神が付いているんですがねえ。」
「そういや、あの日も馭者台で飲もうとしてたねえ。」
「あっ・・・」
「まあまあ、今のローサがあるのはゲルを始め、みんなのお陰だからね。」
「皆さん、本当にありがとうございます。これからご恩返ししていきますので、よろしくお願いします。」
「まあまあ、まずは元気なお子をよろしくお願いしますわね。」
「そうですな。皆、楽しみにしておりますぞ。」
相変わらず、この人たち、遠慮なくぶっ込んでくるよね・・・




