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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
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ちょっとした偶然

「いいえ、ゲルハルトさんはとても優しくて大好きです。ご主人様もそうですが、失敗してよく叱られていた私を、いつも元気づけて下さいました。」

「叱っておったのはメイド長で間違いないな。」

「お母様はいつも厳し過ぎるのです・・・グスン・・・」

「あんたって子はどうしてこう、ホントにもう。」

「ゲルの影響ですね。」


「そうじゃ、奥様。あれは励ましているように見えて、サボっておっただけじゃ。」

「まあまあ、でも、ゲルさんとローサさんは、最初からとても仲がよろしかったですわ。」

「ほほほ、それはゲルハルトのお陰で、今の奥様がおられるからですよ。」

「旦那様ではなくて、でしょうか。」


「もちろん、直接的には旦那様のご決断ですが、あの日、二人が出会うことできたのは、ゲルハルトのちょっとした行いのお陰でしてな。」

「あの、お聞かせいただくことはできますでしょうか?」


「ええ、あの日はスーディルの港の視察を予定しておったのですが、朝からあいにくの雨でしてな。私が中止を判断してお屋敷に上がった時にはもう、ご出立した後でございました。雨なのでゲルハルトが気を利かせて、いつもより早く出たものでございます。」

「そう言えばそうだったなあ。」

「視察できるかどうか微妙だったが、待ってもこれ以上天候が良くなるとは思えんかったからなあ。」

「もし、いつもの時間に出発していたら・・・」

「まあ、そういうことになっていたかと・・・」


「本当に、私はあの時、神のご加護を受けていたのですね・・・」

「そうですね。でも、ローサさんであれば、神は必ずお救い下さると思います。そして、私はそのローサさんに救われた者の一人です。」

「そうだね。私もその中の一人だ。」

「あらあらまあまあ。」


「私はローサ様がいてくれて嬉しい!」

「そうじゃな。端的に言えばレミリアの言うとおりじゃな。」

「ほら、あっしのお陰だろ?」

「でも、ゲルの加護ではありませんからね。」

「おかしいなあ。あっしにゃ、酒の神が付いているんですがねえ。」

「そういや、あの日も馭者台で飲もうとしてたねえ。」

「あっ・・・」

「まあまあ、今のローサがあるのはゲルを始め、みんなのお陰だからね。」


「皆さん、本当にありがとうございます。これからご恩返ししていきますので、よろしくお願いします。」

「まあまあ、まずは元気なお子をよろしくお願いしますわね。」

「そうですな。皆、楽しみにしておりますぞ。」


 相変わらず、この人たち、遠慮なくぶっ込んでくるよね・・・


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