卒業式
さて、学校生活の最後は瞬く間に過ぎ、ついに卒業式を迎えた。
終業式に続いて行われるが、式典といっても学長と来賓の挨拶、送辞と答辞、首席が代表しての証書授与程度で、全て合わせても1時間かからない。
今日は滅多に着用しない制帽を被っている。
大学の卒業式なんかで見かけるあの変な形のヤツだ。
あれを最後に投げるのだそうだ。しかも、鳩まで飛ばすのだ。
こんな時代なのに、そんなことを企画する人がいるのは驚きである。
もちろん今、壇上で答辞を読むのは不動の学年首席である。
「それではまず、この3年間、未熟な私たちを指導し、成長させて下さった学長ほか、教職員の皆様方、校内のスタッフをはじめ、多くの関係者各位に対しまして、御礼申し上げます。先ほど、在校生代表より、身に余る送辞をいただき、私たち卒業生一同、身が引き締まる思いでおります。3年前、入学式の日は、今にも泣きそうな曇天でしたが、私たちは皆さんのお陰で羽ばたく力を得て、本日、見事に晴れ渡った空へ旅立つ事ができます。私たちはこれから、それぞれの道を進み、各方面でいずれは国を支える人材となるべく奮闘します。苦しい時はここでの経験を思い出し、活かしながら前に、そして更なる高みを目指して頑張ります。在校生の皆様方も、今以上に力を付け、将来、力強く羽ばたけることを期待し、お別れの言葉とさせていただきます。本当に、ありがとうございました。」
「ああ~本当に卒業しちゃったねえ。」
「リサさんは明日早速挙式だよね。」
「アスペル商会が威信を賭けてご協力させていただきましたから、もうバッチリです。」
「パレードするんでしょ。もう町もその話題で持ちきりだよ。」
「それだけは止めてって、頼んだんだけどさあ。」
「エル君たちはしないの?」
「あくまでリンツ伯爵家の挙式だからね。地味にやるよ。」
「よくそれで公爵様が納得したよね。」
「同じ週に2回もねえ。それにほら、目立つのはちょっと。」
「ああ、色々あったもんねえ。」
「そういや、卒業記念パーティーは出ないの?」
「リサさんもそうだけど、私たちもさすがに忙しいからお暇するよ。」
「エル君は結局、1回も出ずに終わったね。」
「私らしくていいんじゃないかな?」
「でも、寂しくなるね。」
「まあ、みんなで都合を合わせて、また会おう。」
「そうだね。じゃあ取りあえず、また明日!」
顔を上げれば、力強い光を帯びた雲一つ見えない青空・・・
第二部 完




