卒業が近い雰囲気
3月は卒業シーズン、ではない。
あくまでここでは6月30日が卒業式である。
ただ、卒業まで4ヶ月を切るこの時期は、就職や婚約ラッシュでもある。
私たち以外でも婚約を発表した生徒はいるが、何と言っても今一番ホットなのはリサさんだ。
何せ未来の公爵夫人である。
しかも、今まで浮いた話の一切無かった、イケメン注目株ケヴィン様と、全くノーマークのリサさんだっただけに、そのインパクトは特大だった。
今や、リサさんのステータスと注目度は、生粋の公爵令嬢を遙かに上回り、取り巻きになりたい方々に追い回される始末。
ちなみに、レイ君は公爵家の執事見習いに、アル君たちは、それぞれ家業に専念することが決まっている。
「もう、やってらんないよ。何なのよ、みんなして・・・」
「さすがのリサもお疲れね。」
「あんた、今までこんなのに耐えてたんだね。尊敬するわ。」
「リサなら大丈夫です。信用できる方の見極め、大事なのはこれだけです。」
「それが難しいんだよ・・・そうでなくたってさあ・・・」
「でも、そのお陰で私たちは随分、楽させてもらってる。」
「もう、完全にアーニャにやられたわ。卒業後でも良かったのに・・・」
「いいえ、お兄様より私が先に結婚する訳にはまいりませんもの。」
「そりゃそうかも知れないけどさあ・・・」
「でもリサ様、今や学内で敵無し状態ですよ。」
「うん、過去最高シュタインバッハになってる事だけは分かる。」
「大丈夫です。僕が全力でお守りします。」
「そういやレイ君、若奥様って呼ぶの?」
「もちろんだよ。卒業後は執事のそのまた見習いだからね。」
「アタシはレイ君って呼ぶけど。」
「ええ~・・・」
「リサらしくて良いと思います。」
「でも、卒業かあ、何だか寂しいね。」
「まさかキース君から、そんな言葉が出るとは思わなかったよ。」
「いやあ、そりゃあ出るよ。こんなに楽しい学校生活なんて予想してなかったからねえ。」
「そうだね、平民なんて相当雑な扱いを受けると思ってたからね。」
「まさか、私が一番雑な扱いとは思っても見なかった。」
「まあ、エル君は特別よねえ。」
「今でも、あのグループ課題研究の表彰式は、何か泣けてくるよ・・・」
「まあ、知らない人からすれば、学年一桁6人にブービー1人のグループだし。」
「あれは、私も珍しく怒りが湧いてしまいましたわ。」
「・・・・」
普段怒らない人を怒らせるのは、絶対にやめようと思った。




