ドレス製作
3月に入るが帝都はまだまだ寒い。
寒いが、暑い夏の挙式のため、準備が急ピッチで進む。
今日は公爵邸でアーニャさんとリサさんのドレスのデザイン決定と採寸だ。
何せ、公爵家の威信を賭けた逸品を作ると皆、意気込んでいる。
もちろん、そのような場に、私ごときの入る隙は無い。
「すごい熱気ですね。」
「あんな真剣な表情の公爵様、初めて見たよ・・・」
「リサさんも真剣ですね。」
「いやあれは、魂が抜けちゃってるだけだよ・・・」
どうやらデザインは決定したみたいで、ここで男性陣は追い出される。
「アルマさん、アルマさん、ちょっと!」
「はい、何か御用でございましょうか、エルハバード様。」
「アルマさんもデザイン決めてきなよ。費用はウチで出すから。」
「いえ、私は母のドレスで十分でございます。」
「まあまあ、そう言わずに。アルマさんが良くてもマイヤー家の方は、そうはいかないと思うよ。」
「・・・それはそうですが・・・」
「いいからいいから、ローサ、付いてあげて。」
「はい、承知いたしました。では、アルマ様、まいりましょう。」
そう、そういう訳にはいかない。
何せ7月1日にケヴィン様とリサさんの挙式が2日に亘って執り行われ、3日に私たち。
一日置いて5日にルーデルさんとアルマさん。
7日に帝都を発って25日にロスリーでローサと、という風に1ヶ月に4回も行う。
その全てが最高のものでなければならないのだ。
「アルマさんも今流行の物を選ぶことができました。ご主人様、ありがとうございます。」
「後はローサだけだね。」
「えっ?私も、ですか?」
「当然だよ。既に帝都にエマさんが来て、デザインと採寸をする手筈になっているから、そのつもりでね。」
「あ、あの、よろしいのでしょうか?」
「当然だよ。それこそリンツ家の威信を賭けるよ。」
「あの・・・」
「もう決まってるからね。自分でデザインを決めるんだよ。」
「あ、ありがとうございます。その、私なんかのために・・・」
「期待してるよ。」
「はい。」
フッフッフ、逃げられると思ったら大間違いなのだよ、ローサ君。




