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リンツ伝  作者: レベル低下中
第二章 貴族学校編
482/1781

噂になっているらしい

 何か最近、視線を感じる・・・

 何かヒソヒソされているような、あの感じ・・・


 なんて思ってたら、クラスメイトの何人かから、「おめでとうございます。」と言われ、やっと納得した。

 でも、案内状は南部諸侯以外にはほとんど送られていないはずなんだけどなあ・・・

 ということで、いつもの図書室。


「何か校内がザワザワしてるわよ。」

「そりゃあ、タダでさえ公爵家のご令嬢というだけで噂のネタになるのに、加えてあの事件があったからねえ。」


「その割には、アナスタシアさんの取り巻きは増えないねえ。」

「まあ、婚約が決まるまではいろいろ思惑が交錯するだろうけど、決まってしまえば興味は失せるものよ。」

 主婦か!


「それに、よりによって辺境の伯爵家だからねえ。本当はかなりの実力者なんだけど、みんな知らないからね。仕方無いよ。」

「そうねえ。どっちかって言うと、東部の伯爵家かあって感じね。話題の人だったから噂になってるのよ。やっかみ無しの哀れみ半分っていうか。」


「まあ、別に侮られるのはどうでもいいよ。それよりヒソヒソされるのが何か、気持ち悪い。」

「そうですね。でも、あの時に比べたら、何ということはございません。」

「強いわ~」

「まあ、アナスタシアさんがいいならまあ、私も我慢できるけど・・・」


「ところで、町の様子はどうなのですか?」

「う~ん、特に変化無しかな。」

「一般の人はあまり知らないってことかな?」

「そうだろうね。」

 大っぴらにしなくて良かった。


「まあ、どちらにしても、人の噂はナントカっていうし、そのうち落ち着くよ。」

「じゃあさ、町に繰り出してお茶でもしようよ!」

「じゃあ行くか。」

 みんなで繁華街に向かって駆け出す。これもいつもの風景。

 中身はいいオヤジなのに、青春してるんだよなあ・・・照れる。


「こういうのも、とてもいいですね。」

「そうですね。こういう時間を、大切にしていきたいですね。」


 楽しく駆け出す中に、どことなく感じる寂寥感。これって何だろうね。

 前を走るみんなの背中には、翳りなんてどこにもないのに・・・


「でも、それが分かるほどの機微は、持ち合わせがないんだよなあ。」


 しょうも無いことを考えることを止めて、後を追って走り始める。


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