信じて待つ人
「まあまあローサさん、また浮かないお顔になっていますよ。もっと明るい顔をされないといけませんわよ。」
「ありがとうございます。オルガさん。」
「あなたがそのようにやつれてしまわれたら、せっかくお戻りになった若様が悲しんでしまいますよ。」
「はい。そのとおりですね。でも、どうしても心配してしまいます。ご主人様を信じているはずですのに・・・」
「そうですね。不安は待つ身に募る、と言いますね。では、こういうお話をしましょう。旦那様はどんな過酷な戦であろうと、勝ち負け関係なく、いつも何事も無かったかのようにお帰り下さいました。若様はその旦那様の血を受け継いでおります。ですから絶対に大丈夫です。何と言っても共に暮らしていないのに、あれだけ似ているのですから。やはり親子ですね。」
「そんなに似ているのですか。」
「一見すると全く逆に見えるお二人ですが、中身はそっくりですよ。違いが目立つのは、若様がお歳の割に随分と大人びているところでしょうか。あれは普通では無い、何か不思議なものを感じます。対して旦那様は見た目は大人、中身は子供でございます。まあ、随分と大人ぶるのは上手になりましたし、変わらない所が旦那様の良い所でもございますが。」
「そうなのですね。旦那様はとてもお怖い方とお見受けいたしましたが。」
「見た目で大分損をされておいでですが、存外、そのような事はありませんのよ。だからこそ、奥方様と上手くいかなかった、いえ、このような事申し上げるべきではありませんでしたね。余計な事を申してごめんなさい。」
「いえ、ありがとうございました。何だか少し元気が出ました。」
「それはようございました。あなたは、幸せを確かに掴み、若様はそれに確かに応えて下さる方です。いつの時も若様を信じ、お慕いし、待つことを厭わない事こそ大事です。決して掴んだ手を放さないように。まあ、若様ならローサさんが手を放しても、手首をしっかり握っていて下さるでしょうけど。」
「お~い、ジョセフがお菓子持ってきてくれたぞ~!」
「行きましょうか、ローサさん。」
「はい。」
「レミリア!もうちょっと綺麗に食べなさい!」
「そうよ、姉さんみたいになっちゃうよ!」
「アンタねえ、アタシをポンコツみたいに言わないの!」
「そういうアイリーンもボロボロよ。」
「こぼしてないから!もう、ティアラさんまで笑わないで!」
ご主人様、お屋敷は今日も賑やかです。




