再びのゲッツェン
帝国歴251年4月10日
3月15日にレッツェを出発した東北部諸侯連合軍3万5千は、途中で兵の合流を繰り返しながらゲッツェンに到着した。
既に中央陸軍と中北部21万、西部9万、南部10万、イシュファハーン2万の計42万の大軍が北部街道沿いに展開し、決戦に備えているとのこと。
また今回はエル=ラーン軍2万もマルチン=ユグノー国境沿いに展開し、牽制しているとのこと。
我々は陽動部隊として王都を目指せと、既に命を受けている。
対するマルチン=ユグノー軍は約30万らしい。
この数からして農兵まで徴発したことは間違いない。
たとえ勝っても食料生産・備蓄両面での打撃は大きいだろう。
敵の配置からして、我々は旧ユグノー王国の都マーリエを目指すべきなのだろうが、委細構わず現王都のダリアを目指せと指示されている。
強気が過ぎる・・・
ということで、我が手勢はゲッツェンの西約100kmにある商業都市、ベリッヒハイネを目指す。
「斥候からの情報はどうなっておる。」
「はい、敵軍はベリッヒハイネ近郊に集結中。その数約5万と見られます。」
「敵はゲッツェンに押し寄せますかね。」
「こちらを迎え撃つのではないかと思われます。」
「マーリエ方面はどうじゃ。」
「はっ、約3万とのことですが、こちらはエル=ラーン軍の動きもあり、自らは動けないものかと。」
「どうする?エルハバード卿。」
「中央陸軍の動きを見ましょう。我々は陽動ですから、積極的に打って出るより、出そうな姿勢を仄めかす方が良いでしょう。」
「しかし、ベリッヒハイネに圧力を掛けるように命じられておるが。」
「我々の方が寡兵でございます。なぜ我らが攻め手なのでしょう。」
「そうよのう。守備側が有利じゃからのう。」
「しかも大砲は運ぶだけでも一苦労です。これを長距離移動中に攻撃されたら、数も少なく、縦列陣形の我が軍は戦いようがございません。」
「そうよの。双方合わせて8万近い敵軍を引きつけておるなら上出来であろうに。」
「では、差し当たり、ゲッツェンの守備に専念しましょう。」
「エルリッヒ殿、貴殿らは怖じ気づいたのか。あのような弱兵ごときに恐れる事などありますまい。」
「失礼だが、ああ~済まぬ。忘れてしもうた。」
「陸軍軍監部のブルノ・マッキだ!今回も貴軍の軍監を努めるので、そのつもりで。ところで、陛下の命には従ってもらう。たとえ侯爵様であったとしても。」
「では、ゲッツェンを守備している栄えある帝国兵で、弱兵どもを蹴散らせばよい。」
前回と打って変わって、まるでヤル気なし。




