目を離した隙に色々出来てた
帝国歴245年10月
半月ほど鍛冶屋とガラス職人を放置していたら、次の仕事を催促されたので視察する。
まず、鍛冶屋改めロスリー金属部品工業に来てビックリ。
ホントに大砲と鉄砲が出来てた。しかも弾付きで。
また羅針盤、測距儀、コンパス測量器、望遠鏡、顕微鏡もしっかり完成していた。
この早さに驚く。
まあ、よく考えたら戦国時代の鍛冶職人も鉄砲をすぐコピーしてたし、あれも京都や大坂ではなく、辺鄙な離島の名も無き鍛冶職人の成した偉業である。
大陸最強国家の帝都から約2週間の距離にあるロスリーで出来ない道理は無い。
その他大小長短様々な管やローラーが所狭しと並ぶ。
そりゃ、早く引き取って欲しくて催促するわな。
続いてガラス工房を視察した。
レンズの出来映えは先ほど確認したが、プレパラートやビーカー、様々な色のビンやガラス管など、こちらも予想以上の精巧さである。
これで化学、精密機械、金属精錬、兵器の各工場の稼働が可能になる。
見てろよ貧乏!必ずのし上がってやる。
そして早速各種部品を所定の場所に運び、次なる仕様を指示する。
今回はボイラーと手動式のジャガード織機、ガラス成形器具、活版印刷機、水道管用ジョイント、ワイヤーロープ、そして大砲と銃の改良試作型の仕様提示及び詳細説明である。
ボイラーは蒸気船用、荷揚げクレーン及び急勾配登坂補助用牽引機に使う予定である。
巻上機は馬車をワイヤーで引き上げる装置で、蒸気機関の出力、安全速度、ワイヤー取り外し時間を考えると時短が目的では無く事故防止と貨物積載量増加が目的であることが分かるだろう。
織機は従来から存在する垂直式織機を大型・改良化したもの。
ガラス成形器具は食器の大量生産を目指し、水道管のジョイントは土管接続及び分岐用である。
兵器については、なぜ最初から改良試作バージョンを作らなかったか?と聞かれたが、理由は二つあり、一つは、構造の簡易なものから製作し、構造を理解しつつ経験を積んで欲しかったこと。
そしてもう一つはモンキーモデルを保有したかったことである。
このような兵器を保有していることはいずれ明るみに出る。
そうすると必ず献上しろと言ってくる偉い人が出てくる。
こちらも「はい、そうですか」と素直に渡すほどお人好しではないのだ。
相手が知らないのをいいことにシレっと劣化版を持たせておけば良い。
これは、当家の軍事的優位と利用価値を保ち、お家の安泰を図るための策である。
ところで、そろそろ大量の土管も発注した方がいいかな?
いや、そもそも土管なんて作ってる人いたっけ?




