町の様子に変化を感じる
9月も後半に入ってくると秋の気配がより一層感じられるようになる。
日本でも「暑さ寒さも彼岸まで」というが、ここも同じような季節の移ろいを感じる。
という風流な話をしたかった訳では無い。
「最近はあの行列が日常の風景になりましたね。」
屋敷の外を奥様方やお年寄りの行列が続く。
「ええ、夕方はし尿の収集で混み合います。」
「臭いが玉に瑕だけど、前はあれが常に臭ってたもんね。」
「ええ、街路の馬糞も市民が自主的に回収を始めましたので、随分気持ちが良くなりました。正直、最初は小さな取り組みだと思っていたのですが、殊の外効果が大きくて驚いております。」
「この1点だけなら帝都より進んでるんじゃない?」
「そうですな。それと貧民街が急速に無くなってきております。」
「みんなが土地を買い占めてる?」
「ええ、土地を売って金を手にした者はより郊外の安い土地に越しているか、ゴホークの鉱山に向かったものかと。」
「治安が良くなるといいね。」
「まあ、彼らも治安を乱したかった訳ではないでしょうから、職を得て腹が満たされれば良民となります。」
「そう願うよ。」
「それと学校、市民病院、工場用地、帝国銀行誘致予定地、騎士団新駐屯地、工事に伴う仮住居敷地については全て確保いたしました。」
「ロスリーだけでなくスーディルも何とかしたいね。」
「あそこはロスリー以上に土地が狭いですからな。」
「あと、政庁予定地にある市役所別館の取り壊しはできるかな?」
「ええ、大丈夫ですが、今の建物でも支障は無いのでは?」
「評議会、つまり市民の代表を選挙で選んで市民の要望を実現する組織を作りたいんだ。そのための事務や議会を市役所内で行いたいし、業務を効率的に行える部署の配置となるよう、3階建てとしたい。」
「そういうことでしたら別館の取り壊しを行いましょう。」
「済まないね、後から後から。」
「いえ、後から追加収入がありますので、何とかなります。」
「それとサッツに向かった測量班は終わったかなあ。」
「もう終わると思いますが、」
「いや、工場と学校、病院の基礎的な測量があるんだよね。」
「騎士団長に伝えておきます。」
秋は穏やかな気持ちで仕事に打ち込むことができる。




