澄んだ空
帝都の空は今日も明るい。
特にこの季節は快晴であることが多い。
そして僕は今日、帝都に出てきた父上と食事をしている。
父と会うのは夏以来だ。
久しぶりの父は、陛下に謁見した後なので、疲れの色こそ見えるが、穏やかで晴れ晴れとしたお顔をしており、ひとまず安心する。
これまでの僕は不安に苛まれ、どこか落ち込んだ日々を送っていた。
家の将来や父が断罪されるのではという恐怖、子爵家への降格を聞いたときにホッと胸をなでおろしたものの、僕は次男坊。財力の源を失うこの家に、僕を学校に通わせ続ける力などない。
そんな不安な生活に耐えられたのは、級友たちの励ましと笑顔に他ならない。
「レイ、どうした。さあ、これも美味しいぞ。もっと食べなさい。」
「父上、それで、当家は子爵に降格させられるのでしょうか?」
「喜べ、処分は取り消しとなった。」
「本当ですか!父上。」
「ああ本当だ。エルリッヒ侯爵様をはじめ、東部諸侯の方々からの助命嘆願が通った。しかも、リンツ伯爵家に至っては、恩賞の一部を返還までしてくれたそうだ。」
「そ、そんなことが・・・」
思わず涙が溢れ、流れる。あの、エル君が・・・
恩賞返還だけで済んでないことくらい、僕にだって分かる。
「ああ、陛下からは厳しく叱責されたが、お咎めはなかった。もう何も心配はいらん。」
「はい。おめでとうございます。」
「エルハバード卿にも礼を言わねばならん。戦場でお会いしたが、常にエルリッヒ様の参謀として傍らにあり、その堂々とした姿、すでに一軍の将であった。レイナードよ、これまで以上に勉学に励み、かような立派な大人になるのだぞ。」
「はい、彼から受けた恩を忘れることなく、更に修練に励みます。」
「それでどうだ、学校の方は。」
「はい、エルハバード様を始めとする多くの級友に囲まれ、大変充実した毎日を送っております。剣術大会は準々決勝で敗退しましたが、来年は必ず優勝を目指します。」
「そうか。卒業後も見据えて一歩づつ、努力するのだぞ。」
「はい、必ず。それで、北部はこれからどうなるのでしょう。」
「しばらくは荒れるな。新旧の貴族家は争い続けるであろう。当家は隣接するエルリッヒ家に従属するほかあるまいが、今までも隣接していたのだ。そう悪いことはされまい。」
「リンツ家とはどういう関係になりますか?」
「まあ、エルリッヒ家と緊密な関係らしいし、これからは同じ門閥と考えてよいだろう。何しろ当家にとっては恩ある家だ。友好的な関係を築ければと思っている。」
「それを聞いて安心しました。」
そして、父と別れて帰寮する。
帝都の空は今日も明るい。
特に今日は澄み渡っている。




