帝都に帰ってきた
帝国歴250年11月9日
帝都に帰ってきた、という表現はどうも違和感がある。
私にとって帰るべきは、あくまでロスリーなのである。
なんて下らないことを考えながら、学生寮に帰ってきた。
うん、やっぱり違和感ありありだ。
ロスリーを発つ際は、屋敷のみんなに盛大に送り出された。
また来年まで会えないと思うと何だか寂しい。
ローサの誕生日も船の中。
ロクに祝うことができなかったけど、それでも彼女はよろこんでくれる。
本当にいい子だ。
そして、今日はゆっくり休み、明日から登校する。
友人達との再会。まあ、それだけは楽しみだ。
「今日は、みなさんにご挨拶をされないのですか?」
「明日サプライズ登場したいからね。」
「では、私もアルマさんへのご挨拶は明日にします。」
「すまないね。私に合わせてもらっちゃって。」
「いえ、とんでもございません。あの、ご主人様、お隣、よろしいでしょうか。」
「うん、いいよ、ローサからは珍しいね。」
「いえ、その・・・大切なお話が・・・」
「・・・ローサ?心配事?」
「いえ、そうではありませんけど・・・」
まあ、真面目なローサが思い詰める事自体は珍しくないけど・・・
「その、アナスタシア様のことですけど、ご主人様はどうお考えですか?」
「どうって・・・最近、セバスや団長も同じ事言ってたけど、何にも無いからね。そりゃあ、綺麗だし、非の打ち所がない方だとは思うよ。むしろ、あのレベルでダメだった殿下のセンスを疑うくらいには。でも浮気はしないよ、絶対に、それだけは信じて。」
「あの、そうではなくて・・・その、お慕いしているか、です。」
「あの~ローサさん?あちらは公爵令嬢、こちらはただの貧乏伯爵家。無理だからね。どれだけ違うかを上手く説明できないけど、魚が空を飛ぶくらいには無理だからね。」
「でも、アナスタシア様はご主人様の事をお慕いしております。アルマさんもとても良いとおっしゃっております。私もお仕えするならアナスタシア様がいいんです。アナスタシア様とご結婚していただけるなら、私も第二夫人になってもいいです。もう、決心したのです!」
「へっ?・・・」
また時が止まった。やっぱり夢かって、上手いこと言ってる場合じゃ無い!
待って!今いいって言った?ヤバい!いや、でもそうじゃない!
少し、頭を整理する時間をいただいてよろしいでしょうか?




