帰ってきた実感
「どうですかな、久しぶりの入浴と食事は。」
「ああ、帰って来た~!って感じ。一気に疲れが出たよ。」
「そうでございましょう。今夜はゆっくりお休み下さい。」
「ありがとう、セバス。やっぱりここが一番いいよ。」
「そうでしょうなあ。」
「そうだよ、身の危険はあるのに、休めない、食事は不味い、風呂は無くて臭いし、昼は暑くて夜は寒いし、父が何であんな所に好んで身を置いたのか、さっぱり分からない。」
「ほほほっ、確かに好きな方は少ないでしょうな。それで、戦況はいかがでしたか。」
「まあ、大砲のおかげで激しかったけど比較的苦戦はしなかったよ。戦死者もたった二人で一人は荷馬車の事故、一人は崩れた城壁に巻き込まれてだからね。」
「そうですか、軽微な損害で済んだことは、不幸中の幸いでございます。」
「ところで、アナスタシアさん元気だった?」
「ええ、懸案も解決し、晴れやかに帰られました。若様、もう一押しが必要ですぞ。」
だからモブなんだって・・・
「それと、殿下が廃嫡されました。」
「ああ聞いた。そりゃそうだよね。」
「あと、リンツ企業団撤退マニュアル改訂版が完成しました。」
「ありがとう。これでいざという時も安心だね。」
「それと、領内では真珠の生産が本格化します。」
「ホント!じゃあって、思い出した。大型時計とかちょっと高価そうな物、企業団にある?」
「はい、在庫は確認しますが、何にお使いでしょう。」
「賄賂だよ。」
「はあ、まあ構いませんが・・・」
「悪用はしないよ。」
「悪用ではない賄賂はないと思いますが。」
「助けたい家があってね。助けるって約束したし。」
「そうですか、見繕っておきます。」
「ああ~、でも帝都なんか行きたくないなぁ~、セバス、やっぱりロスリーにいていい?」
「だめですよ、若様。帝都でやるべき事がたくさんございますし、何より勉学こそ今の本分でございます。当家の将来のため、今が大変重要な時。どうか辛抱をお願いします。」
「分かったよぅ、セバス・・・」
「若様は大変な傑物になれます。このセバス、それを毎日楽しみにしております。どうか、若様も今日はごゆっくり休んでいただき、明日からはまた、いつもの若様に戻られることを、期待しておりますぞ。」
「まあ、セバスにそう言われると、敵わないよね・・・」
この感じ、ああ帰って来たって実感する。




