無事、リンツ領に入る
直轄領、中東部を経て、私たちは東部に入った。
こうして見ると、やはり帝都から離れるほど、民衆の暮らし向きは貧しくなるのが分かる。
そして昨日はエルリッヒ伯爵領都ティグレに宿泊した。
本来なら寄親に挨拶くらいすべきなのだろうが、今回は隠密の旅。
華麗にスルーして領境であるアイヒ川を渡る。
そして橋のたもとには騎士の一団が。
「おお若様!長旅お疲れでございましたなあ!」
「ゴホーク殿、やっと帰ってきました。みんな元気でしたか。」
「もちろん!ワシなどまた一回り大きくなりましたぞ!ガッハッハ!」
今はこの会話が嬉しい。
「では、エルベの村で昼食をご用意しております。騎士の方々もお疲れであろう。ここからは当騎士団が先導いたす。」
エルベ村でそれぞれ紹介を終え、昼食にサンドイッチをいただく。
「へえ、ここでも小麦の発酵パンが食べられるようになったんだね。」
「ええ、今年はだいぶ植え替えた農家が多いそうですぞ。」
「魚も揚げてある。」
「アイヒ川で採れる川魚じゃな。新鮮だし泥もちゃんと吐かせておるから臭くないはず。」
「そうですね。みんなも喜んでくれているみたいですし。」
公爵家の騎士たちも何かおっかなびっくりで食べている。
「これが、小麦のパンなのですね。」
「お嬢様、ケーキのようにフワフワしてます。これは美味です。」
おっちゃんは顔を寄せ、何やらひそひそ話を試みてくる。
まあ、おっちゃんの声だから、周りにも聞こえちゃうと思うけど・・・
「それにしても若様、見た目によらず、隅におけませんなあ。あのような見目麗しいご令嬢、何処で見つけられたのですかな?」
「いや、お客人だから、失礼なこと言っちゃだめだよ?公爵家のご令嬢なんだから。」
「ローサ殿も、うかうかしておれませんぞ。もう少し、この、押してゆかねばなりません。」
「いえ、その私は、大丈夫ですので・・・」
ローサよ、そこは少し焦ってくれ・・・
「では、本日はロプスドールで宿泊する。少々急ぎますぞ。」
「少し遠いんじゃない?」
「あ~、オルガノまで行けば、ロプスドールまでは舗装しておるので早いですぞ?」
「えっ?舗装完成してるの?」
「ああ、そうでしたな。この1年で色々発展しておりますぞ。何せ若様と違い、執事長様は厳しいですからな。ガッハッハ!」
セバス、何かした?




