浮気の浮気
「ただいま、今帰ったよ!」
「お帰りなさいませ、ご主人様。今日はお早いですね。」
「うん、一応課題研究も私の役割分が完了したからね。」
「では、何かお祝いをしないといけませんね。」
「ハハハ、そうだね。今度、何か美味しい物食べに行く?まあ、帝都だから美味しいと言っても、店内が豪華なだけなんだけど。」
「そうですね。私のほうからご馳走したいと思います。」
「いいよ、それより良い店の情報が欲しいね。」
「畏まりました。他家のお付きの方に伺っておきますね。」
「みんなと仲良くなった?」
「はい、とても人当たりの良い方が多いので、大変助かっておりますが・・・」
「何かあった?」
「はい、実は今日、殿下にお声掛けしていただきました。それは良いのですが、その、何処に仕えているかと聞かれまして、リンツ伯爵家とお答えしましたら、自分に仕えろと、愛妾にならしてやるから考えておけ、と申されました。」
「何だって!許せん!」
「ご主人様、いけません。」
「ああ、分かってる。しかし、浮気も許せないが更に他家の従者にまで手を出すとは。」
「あの、一応、その場でお断りはさせていただきました。でも、納得はされていないようでした。それに、他の従者の方にも、同じようにお声掛けされた方はいるようです。」
「本当に見境なしだな。まるで盛りのついたサルだ。」
「本当に申し訳ございません。私がもっと気の利いた断り方をしておけば良かったのです。」
「いや、ローサは全く悪くない。でも安心して、必ず守るから。」
「はい。私は何があっても、誰が誘おうとも、お仕えするのはご主人様だけです。ですから、無理はなさらないで下さい。ご主人様あっての私です。これだけは信じて、お忘れ無きよう、お願いします。」
「うん、ありがとう。でも、何か考えないとなあ。場合によってはロスリーに帰ってもらうこともあるからね。」
「はい・・・」
えっ?そんな顔してくれるの?
「ま、まあ、大丈夫だよ。あくまで最悪の場合だからね。それに、殿下も本気で言っているのかどうか分からないし、その気になれば私に一言打診はあるだろうから、その時に断ってやる。だから、心配しなくていいよ。とにかく、そんな事は忘れて楽しいことを考えよう、そう、美味しい店とか。」
「はい。ありがとうございます、ご主人様。」
う~ん、どうしてくれようか、あのバカ殿・・・




