終わりが見えてくる?
「ここまでの流れが上手く行けば後は簡単だね。税収が増えれば出来ることが増えるし、借金だって返済できる。やがて識字率が向上し、乳幼児死亡率が下がれば経済も上向く。これで一連の流れが長期的に続くことが確定する。だから、一時的に支出を切り詰め、その分を将来のために投資しないといけない。大まかな論法はこういう所じゃないかな。」
「でも、最初にするのが倹約って、何かインパクト弱いね。」
「まあ、到底出来そうにないことを書いても、誰も実践しようと思わないからね。」
「その後はどうするの?」
「行政、教育、医療、土木建築、運輸、商業、農業の分野ごとに提言を行う。これは原案を私が書くよ。それをもって主筆が結論に導いてほしい。何かキャッチーな決め言葉で印象的に締めて欲しい。」
「自信はありませんが、頑張りますわ。」
「え~と、結局、何からするんだったっけ?」
「改革しないといけない理由だよ。」
「エル君って、いろんなアイデアは閃くし、理路整然としてるのに、記憶は曖昧よね。」
「疲れてるんだよ。」
「いつも?」
そうだよ、中身は疲れた49才なんだよ・・・
「まあ、記憶が曖昧というか、色んな考えや思いが交錯して、時々、混乱するね。」
「何かエル君が天才っぽいこと言ってる。」
「でも、ここまでの実績を見ると、ある意味天才だよ。」
「おいおい、どの意味で天才じゃないんだよ!」
「殿下に不敬を働くトコとか、空が青いトコとか、ご主人様呼びを強制してるとこ?」
「まあ、全部事実かもしれないけど、ひどくね?」
「まあ、一段落したとこで、お茶しない?外のみんなと。アーニャ、お兄様と弟さんも屋敷にいるんでしょ。どうせならみんなでパーッとやりましょう!」
「ええ、分かりました。休憩も大切ですからね。」
その後は楽しいお茶会、いやお茶会とは呼べないな。
「わー!きょうはおにいさまもいる~!」
「きょうのおかしなに~」
「リサ、あなたはケヴィンお兄様の隣ね。」
「んっ、何で?」
「いいの。」
「じゃあ、僕はミス・ローサの隣で。」
「そんなこと、私が認める訳ないだろう!」
ま~た始まった。
「あの、エルハバード男爵様、公爵様がお呼びでございます。」




