騎士団拡充を決定する
さて、ゴホークから戻った翌々日、また騎士団長と打ち合わせる。
石炭ではない。本業の騎士団についてである。
「先日、火薬の実験を見てもらった。これらは今後の騎士団の主力兵器となることが期待される。それに応じた部隊編成や訓練方法の変更も必要だし、何より今の兵力では、あまりに心許ない。」
「坊ちゃま。お気持ちは十分理解できますが、もう少し後でもよろしいのでは?」
「ワシも立場上こういうのは何だし、昔の仲間ともう一度やれるのは嬉しいが、あんまり無理なさらんでもよいぞ。」
「いや、騎士団は拡充しないといけない。まず、新兵器は特殊な物であり、使い方はもちろん、実戦での運用方法や問題点を知っておく必要がある。急に動員した農民兵にそれができるとは思えない。それに当家は一応、国境警備軍としての役割がある。それが果たせないと判断されたときに、当家がどういう扱いを受けるか。今はたまたま同盟関係にあるが、未来永劫続く同盟などない訳だし。更に、当領地が豊かになれば他から狙われやすくなる。せめて一矢報いる程度の力は持っておきたい。」
太った豚は真っ先に食べられるのだ。
戦後日本は後ろに百獣の王がいたので、食べられずに済んだが、今のリンツ領は、栄養失調状態から脱しようとしている豚である。
せめて犬くらいの強さにはなっておきたい。
また、騎士団の強い支持は領主にとって必要なものである。
力を持たない領主の末路など言うまでも無い。
決して軽視してよい存在ではないのだ。
「分かりました。ではまず50人規模でどうでしょう。後は収入の状況を見ながら50人単位で随時増やしていくというのは。」
「無理を言いますが、よろしくお願いします。」
「いいえ、旦那様もお喜びになるでしょうし、決して悪いことではございません。」
「ワシも歓迎するぞ。」
「では、話が決まった所で新しく出来た金属製品を皆で見てみますか。」
この後、市内の鍛冶屋とガラス工房を視察し、先日完成した金型から製作した銃や大砲、信管、銃弾、銃弾用雷管、羅針盤、ポケットコンパス、望遠鏡、測距儀、顕微鏡の部品とレンズを視察した。
単に金型から取るだけでなく、金属を削り出して製作したものもあり、職人の急速な技術向上には頭が下がる。
ちなみに、顕微鏡があって眼鏡が無い理由は、貴重な職人をそちらに割きたくないこと、識字率が低く、本が貴重なため、そんなに需要が無さそうなこと、すでに既存のものが世に存在するからである。
そのうち余裕が出来たら作っても良い。
さて、これを大量生産できるかが鍵になる。




