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リンツ伝  作者: レベル低下中
第二章 貴族学校編
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いつも波静か

「ご主人様?最近はとてもお忙しそうです。少しお休みになられては?」

「ありがとう。もう少しで切りが良い所まで終わるんだけどね。」


「何をなさっておられるのですか。」

「うん、1年間の成果として、グループで研究をしているんだ。でも、やる事がとても多くてね。遅くまで明るくしてごめんね。」

「いえ、そのようなことはございません。それで、どのような研究ですか?」

「領地経営に関することだよ。うちもいろいろな事をして、随分良い領地になったから、その成果をたくさん盛り込むことができるよ。」

「そうなのですね。ご主人様はいつも、とても頑張っておられましたから。」


「まあ、領主の仕事をしてただけなんだけど。」

「いいえ、ご領主様の中には、あまりよろしくない方も多いと聞きます。でも、ご主人様はとても慈悲深く、領民に慕われておられます。とてもご立派なお方です。」


「そう言ってもらえると頑張った甲斐があるね。」

「はい、私の自慢のご主人様でもありますから。」

「でも、その割に求婚を受けてくれないよね。」

「それは・・・その、大変心苦しい事ではございますが、私ではダメなのです。」


「ローサの気持ちは分かってるよ。私はどんなに時間がかかってもいいと思ってる。いつか、ローサが心から納得して、自分の足でこちらに踏み出してくれるのを、待つつもりだよ。」

「私は・・・その・・・」


「今はそれでいいんだよ。無理に言葉を作らなくていい。そういう時は得てして上手くいかないものだ。ローサが最高の言葉を紡ぎ出すまで、いくらでも待つから、ゆっくり考えればいいんだよ。」


「ご主人様は、いつもお優しいです。そして、いつも穏やかで、広い海のようです。」

「荒れることもあると思うけど。」

「時々、とても楽しそうに荒れていることはございますね。」

「いや、あれは、ちょっと違うような気もするなあ。」


「でも、ご主人様がそこにいるだけで、周りの方はみんな元気になられます。」

「ああ、特に商店街辺りにそういう人、多かったよね。」

「はい、お肉屋の旦那さんとおかみさんは、特にお元気そうですよね。」

「アイツら・・・グヌヌッ・・・」

「ご主人様?白波が立っておられますけど、大丈夫ですか?」

「いや、商店街を思い出してしまった。」


「申し訳ございません。お邪魔をしてしまったみたいで・・・」

「いや、こうしてローサと話している時間が一番楽しいんだから。」

「はい、波が穏やかになりました。」

「しかし、ローサもどんどん言葉を覚えていくよねえ。」


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