準決勝第一試合
「やっぱりエル君が上がってきたね。」
「レイ君こそ予想通りだよ。」
「練習の成果だね。父も喜んでくれるよ。」
レイ君とともに、選手の待機場所に移動する。
すでにお互いの対戦相手も待機している。
二人ともご令嬢だ、男子どうした。
「レイナード卿、リサ・シュタインバッハです。よろしくお願いします。」
「こ、これはシュタインバッハ伯爵令嬢、レイナード・ローゼンブルクです。よ、よろしくお願いしましゅ。」
噛んだ。こういうとこ、レイ君だよね。
二人は握手する。
「エルハバード卿、初日にご挨拶して以来ですね。アナスタシア・ボーエンです。良い試合にしましょう。よろしくお願いします。」
「これはご丁寧に、ボーエン公爵令嬢。エルハバードです。胸を借りるつもりで頑張りますので、よろしくお願いします。」
「第一試合を始めます。選手は前へ!」
第一試合はレイ君とシュタインバッハ嬢の対戦だ。
二人とも片手剣。
「始め!」
まず両者、後ろに下がり間合いを確かめる。
そして軽く牽制。どうやらご令嬢の方が積極的に攻めに回るようだ。
レイ君にとっては願ってもない展開。
「どうやらほぼ互角のようです。卿はどちらが勝つと見込まれますか。」
「う~ん、まだ分かりません。でもお互い、得意な形に持ち込んだと思います。」
「ええ、私もそう思います。でもレイナード卿はリサの攻撃に全く動じておりません。リサも、あのまま攻め続けるのは、体力的に無理があります。」
「レイ君とは、毎朝一緒に練習しておりますが、典型的な大将の剣です。守りを固め、不意の一撃を止めさえすれば、後は部下がトドメを刺す。そういった前提の剣です。彼の立場からすれば理に適っていますよね。」
「確かにそうですね。リサには相性が悪すぎます。レイナード卿は、ほとんどその場から動いておりませんし。」
「確かに・・・」
激しい打ち合いが5分以上続いたが、シュタインバッハ嬢は息が上がってきた。
ここでレイ君が出る。
共に練習していたとはいえ、彼が打って出る姿はあまり見たことがないのだ。
そして彼女の剣が打ち落とされる。
「そこまで!勝者、レイナード君。」
「次は私達ですね。」
「ええ、少しは耐えてみせます。」
二人は中央に進む。




