帝都で迎える誕生日
あの後すぐにローサの体調も戻り、元気になった。
元気になったというか、今まで以上に気を張っているというか・・・
いや、何もそこまでしなくても、とは思うのだが、頑固な彼女は譲らない。
そんなこんなで11月1日、今日は彼女の誕生日だ。
早速、放課後に二人で出かける。
「いつもありがとうございます。」
「なあに、私は祝ってもらうのは照れくさいけど、祝うのは好きなんだ。」
「フフッ、私も同じです。」
「今日はとっておきをご馳走するから、楽しみにしててよ。」
と言って向かった先はロスリー商会帝都支店。
「ここ、ですか?」
「会長、お久しぶりです。例の物、出来てますか?」
「おうご領主様!お元気そうで何よりでございます。勿論、腕によりをかけて作った料理とお菓子が出来上がっております。ささ、どうぞ。」
会長の部屋にはカレーとレアチーズケーキ、チョコムース。
残念ながら新鮮で衛生的な卵は入手できなかったので、お菓子には使えなかった。
「今回のカレーにつきましては、食品加工工廠で製造しました市販用のルーと新たに収穫されました米を使っております。お菓子は既存のものではありますが、帝都で入手可能な材料でここまで出来るということを実証するためのものでございます。どうぞ、ご賞味あれ。」
「これを、帝都で・・・本当に嬉しいです。ありがとうございました。」
「さあ、会長も一緒に食べましょう。」
「ではご領主様、私も御相伴にあずからせていただきます。」
「とっても、そう、ロスリーと同じ味がいたします。」
「会長、凄いね。本当にローサの言うとおりだよ。」
「はい、可能な限り早く、この帝都で売り出したいものです。」
「香ばしい香りが漂ってるね。」
「はい、とてもとても・・・もう、頬が緩んで笑いを堪えることができません。」
「こういった食材に関しても、ロスリー商会に任せるよ。」
「ありがたきお言葉、エネルを焚き付けてもっと輸入させなくては。」
「ハハハ!会長と話すと、ロスリーに居るみたいだね。」
「本当です。とても温かくて懐かしい感じがいたします。」
話題さえ生々しくなければ・・・
そうして楽しい時間を過ごし、帰ってプレゼントを渡した。
ちなみに、寮の裏手で殿下が女性と抱き合っているのが見えた。
せっかくのめでたい日なのに・・・




