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リンツ伝  作者: レベル低下中
第二章 貴族学校編
289/1781

静かな夕食

 学生生活において、特に大切にしないといけない事がある。それは、学食や購買のおばちゃんと仲良くすることである。


 もちろん私は高校時代からそうしてきた。

 しかし、この学校では身分が邪魔しているのか、頭を下げることを知らないのか、そのような行動ができない者ばかりである。


 その点、私は若い頃の教えを忠実に守り、早くも「大食いエルちゃん」とおばちゃんたちのハートを鷲づかみしている。

 教員時代、生徒には人気のなかった私であるが、今の私は食堂で何気に大盛りだったり、皿が一品多かったりする。


 そして、食堂内で食べることはできるが、私は専ら部屋に持ち帰って食べる。

 理由はご想像の通り、ローサとディナーを楽しむためである。


「二人でディナーを楽しめることだけは、学園のいいところだなあ。」

「でも、こうして使用人と共にお食事される方は、ご主人様だけですよ。」

「そうだね。みんな食堂で寂しく食べてるよ。」


「従者の方も、そうですね。」

「あれが不思議なんだよね。上級貴族の従者ともなれば、貴族家の出身者なのにね。」


「そういえば、なぜご主人様には従者が付かなかったのですか。」

「うちは貧乏だったし、周辺の貴族家と疎遠だからね。それより、これ食べてみて。」

「よろしいのですか。これはご主人様の分では?」

「いつも余分をもらってるんだよ。従者用は品数も量も少ないしね。」

「いつもありがとうございます。では、少しだけ、いただきます。」


「静かだけど、とても雰囲気いいよね。」

「はい、お月様を見ながらお食事できるなんて、とても特別な感じがいたします。」

「帝都のどのレストランより、ここがいいね。きっと城よりも。」


「そういえば、今日初めて殿下を拝見しました。」

「よく殿下って分かったね。」

「ええ、東階段を降りてきましたので。」

「ああ、あそこは最上階にしか繋がってないもんね。で、どうだった。」

「はい、とても威厳がおありと言いますか、近寄りがたい雰囲気の方でした。」

「まあ、あの近辺に近づかなければ大丈夫だよ。」


「でも、お一人でした。」

「護衛とか、従者は?」

「いえ、お一人でした。」

「まあ、あんなのはどうだっていい。とにかく今はこの時間を楽しもう。」

「はい、お料理も冷めてしまいますしね。」

「そう、それに、月明かりが照らすローサがとても素敵だからね。」

「ご主人様、それは他のご令嬢におっしゃった方がよろしいのでは?」


 何というか、駆け引きですな・・・


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