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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
274/1781

医薬品研究所の設立

 ついに長年(仮)で運営していた医薬品研究所が発足した。

 とはいっても、ロスリー市民病院内の一角を間借りしてのスタートである。


 育成確保した医療従事者の数はまだ少なく、育てた側から各地に赴任させている状況では研究所専属、という訳にはいかず、病院敷地から離れることができないための措置である。


 勿論、こんな街中で病原菌の実験は褒められたものではないので、できるだけ早期に他所へ移転予定だ。

 場所は市内南の、のろし台に登る山中を予定している。


「いやあ、クリスティアンさんとローマンさんもお元気そうで何よりです。」

「いえ、ご領主様、お久しぶりです。来ていただけるだけで嬉しいです。」

「こんなに近いのに、なかなか時間が空かなくてね。」

「いえ、お忙しいでしょうから、気になさらないで下さい。それに、帝都に行かれるそうで、その前にお会いできてとても嬉しいのですから。」

「そうです。それに、こんな立派な発足式まで開いていただいて、大変光栄です。」


「研究者は増えました?」

「ええ、皆、病院と兼業ですが、私たちを含めて8名で行っています。」

「まだまだ少ないね。」

「ええ、目の前の患者が優先ですので。」


「この部屋は?」

「血清の開発を行っています。最初は驚きました。まさか馬の血で病気が治るなんて。」

「現在は、ガス壊疽とジフテリアを研究しております。」

「まあ、これといった毒蛇もいないからねえ。」

 歩みは遅くとも確実に前進してくれればいい。


「向かいはワクチンかな?」

「はい、生ワクチンの開発室です。ただ、弱毒の塩梅を見極めるのがとても勇気が要ることで、なかなか次に進まないんです。」

「それは、気持ちはよく分かるよ。時間はかかってもいいから、慎重にお願いするよ。」

「はい、ありがとうございます。生ワクチンは、ご領主様の指示通り、はしか、風疹、おたふく風邪、結核、ポリオ、水疱瘡、腸チフス、狂犬病、天然痘について開発を進めております。」


「もう、病名を聞いた時点でビックリでした。これらの予防が確立したら、それは医学の革命ですから。」

「あくまで予防だからね。それと病原菌の取り扱いはくれぐれも慎重にお願いするよ。ここには特に体力的に弱った患者も多い施設だから。」

「はい、細心の注意を払います。」


「ところで、論文は発表したの?」

「ええ、でも残念ながら学会から叱られてしまいました。そんな怪しい装置を使った検証不可能な論文出してくるなって。」


 あ~やっぱり。


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