地図らしきものが完成
屋敷の大広間に地図が持ち込まれた。
まさか、領内の周囲測量と製図に4年半もかかるとは思ってなかったが、これほど時間を要するものならば、あのタイミングで始めて正解だった訳である。
「これは・・・素晴らしいものですな。こうなっていたのですな。」
「一応、縮尺は10万分の1で調製しているよ。」
まあ、現代人からするとプークスクスというレベルだろうが、この時代の人たちからすれば驚愕レベルである。
「このブルーは河川や海ということですな。」
「そう、まだ海とニルヴェ川だけなんだけど、ジル川やハーゲン川を支流も含めて測量すると、もっと地図らしくなる。」
「街道や砦、町の位置なども示されておりますな。」
「これで位置関係も分かるよね。街道も測量させたから、各村の位置も分かるし、山岳のおよその標高も判明したよね。」
「そうですな、最高がこのフェンボリー山の2,022mですか。他にも似たような高さの山がいくつかありますな。」
「ええ、これがリンツ領に雨が多い原因ですね。」
「それに、ゴホーク殿の領地が非常に広い。」
「領地の3/4は広すぎですね。直轄領もこんなに狭い。」
「ワッハッハ!もらい過ぎたワイ。でも、広いのは山ばかりだからだぞ。」
「そうですね、改めて山の多さが分かりました。」
「シュバイツァーとの対比が楽しみですな。」
「ええ、領地の開発にこの地図は大いに役立ちます。」
「ただし、これは厳重に保管し、機密を守らねばなりません。」
「そうだね。新しい金庫買う?」
「はい、それがよろしいと思います。新しい屋敷にも、そういった物を保管できる部屋を作った方がよろしいですな。」
「もう設計が終わってるからなあ。屋根裏部屋とか。」
「それもよろしいですが、火事などの際に直ぐに持ち出せるような工夫が必要です。」
「そうだね。それと、いざという時で思い出した。企業団の撤退マニュアルを作らないと。」
「ほう、それは何故に。」
「ほら、去年なんとか公爵家から圧力がかかったじゃない。」
「ああ、他国に拠点を移すとか・・・あれは買い言葉ではなかったのですか。」
「そのつもりだけど、一応、備えと裏付けは必要だよ。これ以上目立てばもっと難敵に狙われるんだから。」
「そうですな、あの時のケースを元に、考えておきましょう。」
思わぬ方向に話がそれたなあ・・・




