この町を支えるマイスターたち
この町には多くのマイスターがいる。
これは私がこの街で最初に取り組んだ事の一つが職人の育成であったことも関係しているが、親方たちの努力の成果でもある。
そしてこれが、ロスリーとスーディルの最大の違いといってもいい。
ロスリーは工業都市、スーディルは商業都市として違う歩みを始めていると言っていい。
特に冶金、金型、ガラス工芸、楽器、木工などは、帝国一のレベルだ。
「ルッポさん、マキシさん、お久しぶりです。」
「おお坊ちゃん。いや、若様。随分背が伸びましたな。」
「そうです?自分ではよく分からないもので。」
「そりゃあ、前は本当に小さかったからな。」
「ところで、工場の方はどうです。」
「いやあ、毎日忙しいねえ。金型も切削もガラス部品との合わせも。特に細かい一点物が多いんで。まあ、やりがいはあるけんども。」
「こっちもみんな熟練に近い状態になったぜ。まだ帝都で販売してるのは従来型のみだが、改良型が出たらそりゃ、あっと驚くだろうぜ。」
「そうですね。そろそろ演奏家に売り込んでもいいですね。」
「まあ、もう少し改良型の出来を高めたいんでね。出来たら若様に連絡するよ。」
「コイツは凝り性でね。」
「お前さんに言われるとはな。」
「ガラス工房の方は景気いいんでしょうね。」
「あそこは入れ物だけで食ってけるからなあ。それにステンドグラスやらイミテーションやら作ってるだろ。儲けてるよ、あれは。」
「でも、精密機械工廠の部品はここで作っているものも多いですから、実は結構儲かってるんじゃないですか?」
「ああ、バレちまったか。でも切削技術は向こうもかなり腕を上げてきたぜ。金型は諦めてウチに発注してるみたいだが・・・」
「これからもお願いしますね。」
「ああ、ウチも散々儲けさせてもらってるからな。特にフォーク、あれ、何で今まで無かったかなあ。」
「今じゃ生活必需品になりつつありますもんね。」
「その特許使用料をウチだけ免除されてるのも、ありがたいねえ。」
「その分安く売れれば売り上げも上がりますし、親方にも無理を聞いて貰えますし。」
「分かったよ、何でも言ってきな。」
こちらも売り上げ上々のようで何より。




