奴隷解放
ついに市役所から、ローサに関する手続き書類が届いた。
約1ヶ月を要したが、これで万が一にも前所有者から文句を言われることはないだろう。
まあ、伯爵家に文句を言おうものなら・・・
黒い、黒すぎる・・・
この1ヶ月間、待ち遠しかったが、いろいろもあった。
何と言っても温泉回、もといお風呂事件があった。
オルガさんに唆されたようだが、お互い一糸まとわぬ状態で鉢合わせることになった。
大人って怖いな、と思った。
それはさておき、執務室にローサを呼ぶ。
「ご主人様、ただ今まいりました。」
「うん、忙しい所すまぬな、今日はいろいろ伝えたいことがあってな。」
毎日顔を合わせてるのに何だって?
そりゃ、ご主人様だよ。
若旦那様だよ?
いいじゃない、ちょっと偉そうにしたって!
「まず、そなたを私の専属とした。仕事は今まで通りで構わないが、立場は異なる。知っての通り、私は9月から帝都に行くことになるが、これに同行して欲しい。」
「はい、よろこんでお伴いたします。」
「それとこの2通の書類を渡す。ローサのものだから大切にするように。」
「はい。拝見してもよろしいでしょうか。」
「うむ。」
もうダメ!限界!うむだって・・・
「これは・・・その・・・・ローサ・リンツ・・・」
「うん、ローサを養女にした。戸籍がないと何かと不便だからね。まあ、ローサのほうが年は上だけど、まあ、いいでしょ。」
さすがに、伯爵家の養女は父の承諾が必要だが、男爵家の養女なら私が勝手にできる、はず・・・
そう思っていると彼女の目からは涙が。
「ありがとうございます。私のような者に・・・その、このようなもったいない。でも、とても嬉しいです。本当に、ありがとうございます。」
「もう、出自や身分を気にしてはダメだよ。」
「はい、ご主人様。」
行ける、流れは来てる!ここで更に押すのだ!
「ローサ、私と結婚しよう。」
「・・・ご主人様、そ、それはなりません。お気持ちは大変嬉しいのですが、その、私のような者では、ご主人様の名もこのリンツ家の名も汚してしまいます。大切なご主人様だからこそ、立派な奥方様をお迎えしていただきたいと思います。」
ガーン!
流れ、見えたよね、ビッグな・・・
「で、でも、お気持ちは嬉しいのです。ご主人様?お気を確かに。」
無理、お気を確かになんて無理!
でも、押しには弱そうなんだけどなあ・・・
でも私自身、押す力が弱いからなあ・・・




