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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
231/1781

もう、背中が見えない

帝国歴248年11月



 一つ歯車が狂うと、歪みは少しづつ広がり、やがて取り返しがつかなくなる。

 先を走る現実は遠く、どんなにあがいても、その背中を捉えることはできない。

 今の私は風に舞う落ち葉、なすすべ無く流れる景色を、ただ呆然と見つめるのみ。

 

 なんて言っている場合じゃない。

 先月までの報告書を今日中に読まなければ!


 ついに戦艦スーディルが就役した。

 全長55mの巨艦ながら公試で11ノットを記録した。

 3号大砲11門を備える最大最強の船がここに誕生したのだ。

 これから乗員の訓練を重ね、来年初めには南大陸に向け船出する。

 ドックも完成し、軍港も随分完成に近づいた。


 使役事業も始まる。ロスリーとスーディルは残る市街地の舗装を進める。

 シュバイツァー地方は東部街道を、その他の地域も舗装メインである。

 上水道もへワーク、ヒューイのほかにロプスドールやオルガノ、トレド、アッサムなどでも取水口の建設をスタートさせた。


 測量も海岸部を終え、西部エルリッヒ伯爵領境のアイヒ川沿いを北上している。

 また、商店街も最後の第8期工事が始まった。やっと屋敷が建てられる。

 公衆浴場も完成し、これから落成式である。今後、スーディルにも建設する。


 さらに、ロスリー第2次都市整備計画案が市評議会で了承された。

 これにより劇場や図書館の整備も決まった。

 そしてアッサムの町であるが、こちらも続々と新築の家が建ち始めている。


 徴税も順調そうである。

 ただし、シュバイツァー地方はやはり芳しくないらしい。

 働き手を失った家庭も多い。

 セバスが先手を打って教会に孤児院を建てさせているのがせめてもの救いだ。


 人口集計も手間取っている。

 空き家は多いし、戦争で逃げ散った領民も多い。

 当分は判明しないものと考えている。


 政庁支部もオルガノに設置した。ロプスドールはこれからである。

 アッサムの化学第四工廠の建設も始まった。


 技術開発研究所では、ついに時計が完成した。

 まだサイズは大きいが、これから腕時計サイズに縮小させていく。

 発電機も完成した。これから鉛蓄電池の開発を進める。

 また、インク除去剤も完成した。

 脂肪酸と炭酸ナトリウムを主原料にしたもので、今は全く使い道がない物だが、古紙再生に活用することを目指している。


 収穫祭と運動会も成功だったそうだ。

 南大陸の貿易も順調だし、ロスリー商会も駐在員をタルタ港に配置したとのこと。


 こうして、見えない背中はどんどん先に進んで行く。


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