予算編成に着手する
帝国歴245年5月
この世界の年度は、9月に始まり8月に終わる。
なぜ、私の夢なのにこういう所融通を利かせてくれないのか、自分に腹が立つ。
ただ、前年度に徴収した税を次年度に使うシステムは大変良い。
これが、入った横で使うシステムだったら、先の予定が立たずに立ち往生必至であった。
ということで、昨年9月から徴収員が頑張って集めてくれた金額が確定した。
何と1207万5200ディリ。感覚的にはざっくり1ディリ10円くらいなので、1億2千万円が年間予算である。
これが多いか少ないかを論じても仕方ないので予算編成してみる。
まず、債務返済に550万ディリを充てる。
人件費と私の生活費に520万ディリ、これらは昨年度とあまり変わらない。
残りで農林畜産試験場建設とリンツ土木商会設立を行い、わずかに残った金額は、予備費として残しておくことにした。
どうやらお茶は無理だが、たまには白湯以外の物も飲めそうである。
いや、白湯以外の飲み物って何?
「あれだけ計画は緻密なのに、予算はざっくりしましたなあ。」
「細かく決めようと思ったけど諦めたよ。」
「毎月の収入については、どういう扱いにしますか?」
「一応、企業設立までは歳入扱いで一般会計の口座に入れ、適宜使うということでどうだろう。」
「ええ、何だか難しく考えても、結果にあまり影響がないような気がしてまいりました。」
「後は使役事業の計画だけど、市民から要望来てます?」
「やはり道路は好評のようです。あまり高度な技術も必要ありませんし、家から作業現場が近いので皆賛成しそうです。」
「他に変わったことはあった?」
「はい、また奥方様から督促がございました。」
「うん、異常なしだね。」
「ところで、土木商会設立ということですが、いきなり事業を行うのは人材的にどうかと思います。」
「そんな複雑な会社組織は考えていないよ。時間的余裕もないし。ただ、道路建設を通年で行いたいし、技術力が上がれば水道や堤防建設にも着手したい。そして、会社が軌道に乗ればロスリー商会かエネル商会に売却してもいい。会社の存続期間は10年の限定で、民間でできることは極力民間に任せたい。」
「なるほど、つまり小さく始めて自主運営が出来るようになれば、伯爵家の事業を受注させつつ、少しづつ手を離していくのですね。」
「そ、そうだね。セバスは何て切れ者なんだろう。」
いや、予算同様、そこまで見通していた訳じゃないよ・・・




