新領地を得たが
「さて、新領地が加わった訳だけど、それはそれで問題だらけなんだよなあ。」
「ええ、元々はリンツ領より豊かな土地でしたが、今となっては貧しい地域と位置づけられる状態ですからな。」
「そう、しかもかなり景気が悪く、住民流出が続いた土地だからね。」
「しかも、当家に対して反感もございましょうし。」
「多くの騎士爵家が統治能力を喪失している。その上、働き盛りの戦死者も多い。」
「孤児も相対的に増えておりますな。」
「ああ、せっかくお金に余裕が出てきた所だったのに・・・」
「まあ、そうは言っても当家の領地になった訳ですので、早急に手を打つ必要がございます。」
「まずは、各種計画の策定からだね。」
「はい、それと行政組織の再構築ですな。」
「しかし、シュバイツァー家は当主主導で領地経営を行っていたようで、ほとんど下級役人しかいなかったみたいなんだ。」
「典型的な貴族的支配地だったということですな。」
「しかも騎士爵家の領地はリンツ領同様、規模がかなり大きい。」
「なるほど、騎士爵の存在も大きい訳ですな。」
「うん。だからそう簡単に取り潰せない。それと、リンツ領内の騎士爵に領地を与え、ある程度の統治を肩代わりしてもらう必要がある。」
「それを考慮した論功行賞を行うのですな。」
「まあ、先祖伝来の土地を離れることに反発する者もいるかも知れないけど。」
「いろいろ課題は多いですな。」
「そう、今となっては、領地より男爵の首を要求した方が良かったんじゃないか、なんて考えることもある。」
「まあ、遺族感情を考えるとそうでしょうが、貴族社会を維持しようと考える中央は、受け入れないでしょうな。」
「領民のために貴族の首を取るなんて、リスクが高いものね。」
現代と同じようにはいかない。
「しかし、ロスリーから色んな指示を出すには遠いねえ。スーディルかロプスドールに領都を移した方がいいのかな。」
「スーディルは領都機能を移すには土地がなさ過ぎます。それに中心部は道路が狭い密集地ですから。ロプスドールは男爵邸も使えませんし、水道も舗装道路もございません。」
誰だよ!破壊したのは。
「まあ、政庁の職員には気の毒だけど、各種計画樹立から実施してもらうしかないね。」
「そうですな。税率が低いことを住民に対するメリットとして、不満を抱かせないようにするしかないでしょうな。」
「可能なら、移住者に戻ってもらうことも考えたいね。」
「それだけは難しいですな。」
いや、全部難しいよ・・・




