戦いは終わる
その後、宰相名の裁定が下り、シュバイツァー男爵は他領侵害と私闘を行った罪により領地が没収され、その領地は、今回の戦功として当家に下賜された。
また、賠償金は5,000万ディリと半減したが、領地を喪失したシュバイツァー男爵側の支払い能力を考慮したものであり、これを受け入れた。
その交換条件として男爵はダイエットに成功し、帝都に去った。
この裁定を受け5月末、リンツ軍は旧領都ロプスドール入りし、6月1日に併合宣言を行い、正式に施政権を得た。
しかし、統治能力を失ったシュバイツァー領は、今後、当家に大きな負担としてのしかかって来る。
「さて、旧シュバイツァー家臣団の挨拶も済んだし、ロスリーに帰ろうか。」
「そうですな。しかし、戦も交渉も実に鮮やかでしたなあ。」
「何せおしゃべりエルちゃん、だからね。」
「ガッハッハ!何とも痛快でしたぞ。それに遺族に謝罪させられる男爵の顔。あれは傑作でしたしなあ!」
「何より、住民が家に戻れることが一番良かったよ。」
「そうですな。」
まあ、個人的には、保護者に吐きたい台詞第一位~十位くらいまで言えたことだけど。
そんなことを考えながらロスリーに向かう。
「お帰りなさいませ、坊ちゃん。」
「坊ちゃま。お怪我の具合、いかがですか?」
「ありがとう、セバス、マリアさん。このとおり元気だから。」
「坊ちゃま・・・」
いつの間にか、夏といっていい季節になったもんなあ・・・
そして、少し落ち着いた夜、ローサを自室に招く。
「呼んだのは他でもない。お礼を言いたくて。」
「お礼・・・ですか?」
例のペンダントを取り出す。
「これが矢を防いでくれたおかげで命拾いした。この傷は、私の命と引き替えに刻まれたものだ。私が助かったのはローサのおかげだよ。本当にありがとう。」
「い、いえ・・・お役に立てたのであれば、嬉しいです。」
「肌身離さず持っていて良かった。もちろん、これからもそうするつもりだよ。」
「神のご加護だと思います。でも、ご無事で本当に良かったです。」
「ありがとう、本当にありがとう・・・」
もうそれ以上、言葉が出て来なかった。
そして彼女と抱き合い、再会できたことを喜んだ。




