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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
211/1781

エルハバード、過去最大の調子に乗る

 シュバイツァーの笑い声が響く。

 商人にしては、感情豊かな御仁だなあと思う。


「愉快愉快、これほど胸のすく思いは久方振りじゃ。リーブル伯爵殿、感謝いたす。さあ、エルハバードよ、即刻我が領地から立ち去れ!グワッハハハハハッ!」


「で、調停人よ、話はもう済んだか?」

「ああ、いかにも。」

「皆の者、聞いたとおり交渉は決裂した。よって我が軍は総攻撃を開始する。各位出撃準備をせよ。」

 幕舎内の伝令が外に駆け出す。


「ま、待てエルハバード。これは内務卿からの命令である。聞かぬとなれば貴家は断絶を含む厳しい処分が下ることになるぞ!」


「そもそも、シュバイツァーが滅亡すれば調停の必要はないし、大体、何故勝っている我が方が一方的に譲歩せねばならぬ。我々は我々のすべき事を成すまで。」

「ま、待て、そ、そんな事をすればそちもタダでは済まぬぞ。」

「裁定に従っても、タダでは済んでないだろう?」

「き、貴様っ!どこまでこの私を愚弄すれば気が済むのじゃ!」

 リーブル伯爵は剣を抜き放ち、私の首筋に刃が当たる。

 いや、本当に当たってる。

 下手くそめ、血が出たじゃないか!


「ほう?自分の意見が通じなければ剣を抜くか。とんだ調停人だな。それでどうする。まさか、それを横に薙ぎ払って帝都に帰れるとは思っておるまい。」

「な、ぐっ!」


「ここで、剣を振るって華々しく散るか、無様に剣を鞘に収めるか、そなたに決めさせてやろう。好きな方を選ぶが良い。」


「まあまあ、両者ともその辺にしたらどうじゃ。リーブル殿、調停人が冷静さを失うようではいかんぞ。それに、リンツ家にも言い分があるのではないかのう?」

 えっ?この人、案外いい人かも。


「わ、分かった。」

 リーブル伯爵は剣を収め、席に座る。


「ところで、そちらに言い分があれば聞こうか。」

「その前に・・・中央の貴族は罪なき者に剣を向け、謝罪の一つもしないのがしきたりなのか?」

「ぐっ、なっ、・・・むむむ・・・」

「何がむむむだ!」


 やった、これ、これが言いたかった。

 まさか生きているうちに、これが言えるシチュが来るなんて!

 こんなの、プロレスで例えたら、ロメロスペシャルが決まるくらいレアケースじゃないか!

 あ~生きてて良かった!


 何か交渉中なのに、我を忘れて喜んでいる私が居る。


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