エッセ川の戦い
帝国歴248年5月4日
それは突然始まった。敵が夜間総攻撃に打って出たのだ。
全軍が橋から川から。川には板を沈め、そこを歩兵が渡ってくる。
しかし、こちらはすぐに照明弾を発射し、鉄砲隊が応戦する。
動きの鈍い敵兵が次々に倒れていく。
「正に討ち取り放題ですなあ。このような戦ではワシも出番がありませんぞ。」
「明るくなれば騎馬や歩兵の出番です。まずはあの葦原を焼いてもらわなくては。」
「そうですな、敵も大いに怯んでおりますし、岸にたどり着く者もおりません。敵の撤退後にワシらが突撃を敢行しても問題なさそうですな。」
一体、どれくらいの銃弾が敵に飛んでいったのか。
砲弾も大体の見当で撃ち込まれる。
そして夜が明ける。敵は一旦退却したようだ。
川には夥しい敵兵が浮かぶ。凄惨な光景だ。
予定通り葦原を焼き払うと、既に敵陣は放棄され、無人の野が広がっていた。
「進軍しますか。」
「いえ、川を渡るのは慎重に行きましょう。斥候を放ち、領都の様子を確かめたい。」
「承知。」
その後、盛り返してきた敵軍と散発的な小競り合いはあるものの、膠着してきた。
そんな中。
「帝都から使者を名乗る者が来ましたが、いかがいたしますか。」
「武装を解除させた後に、会いましょう。」
「お初にお目にかかる。それがしは帝国貴族、ヴィクトール・リーブル。陛下より伯爵位を賜っておる。」
「これはこれは、リーブル伯爵殿、それがしはエルハバード・リンツです。」
「此度はそれがしが、この許されざる蛮行を止めるため、調停人として帝都よりわざわざ参上したものである。速やかに戦闘を停止し、沙汰を待て。」
何だコイツ、いきなり来て喧嘩売ってるの?
「こちらはともかく、シュバイツァー軍の攻撃が止まない限り、戦闘をやめる訳にはまいらん。向こうの戦闘は止めたのか?」
「こちらが攻めておるのだから、こちらを先に止めるべきであろう!」
「馬鹿を申すな!こちらに抵抗せず死ねというなら今すぐ帰れ!」
「な!何を、ガキのくせに無礼な!不敬であるぞ!」
「使者のお帰りだ!大砲を撃って送り出してやれ!」
まあ、現代なら日時を決めて停戦とかなんだろうけど、この時代、時計もあてにならないからね。
ということで、追い返してやった。
どうせ敵同然の使者だ。
今さら追い返しても影響あるまい。




