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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
208/1781

エッセ川の戦い

帝国歴248年5月4日



 それは突然始まった。敵が夜間総攻撃に打って出たのだ。

 全軍が橋から川から。川には板を沈め、そこを歩兵が渡ってくる。

 しかし、こちらはすぐに照明弾を発射し、鉄砲隊が応戦する。

 動きの鈍い敵兵が次々に倒れていく。


「正に討ち取り放題ですなあ。このような戦ではワシも出番がありませんぞ。」

「明るくなれば騎馬や歩兵の出番です。まずはあの葦原を焼いてもらわなくては。」

「そうですな、敵も大いに怯んでおりますし、岸にたどり着く者もおりません。敵の撤退後にワシらが突撃を敢行しても問題なさそうですな。」


 一体、どれくらいの銃弾が敵に飛んでいったのか。

 砲弾も大体の見当で撃ち込まれる。

 そして夜が明ける。敵は一旦退却したようだ。


 川には夥しい敵兵が浮かぶ。凄惨な光景だ。

 予定通り葦原を焼き払うと、既に敵陣は放棄され、無人の野が広がっていた。


「進軍しますか。」

「いえ、川を渡るのは慎重に行きましょう。斥候を放ち、領都の様子を確かめたい。」

「承知。」


 その後、盛り返してきた敵軍と散発的な小競り合いはあるものの、膠着してきた。

 そんな中。


「帝都から使者を名乗る者が来ましたが、いかがいたしますか。」

「武装を解除させた後に、会いましょう。」


「お初にお目にかかる。それがしは帝国貴族、ヴィクトール・リーブル。陛下より伯爵位を賜っておる。」

「これはこれは、リーブル伯爵殿、それがしはエルハバード・リンツです。」

「此度はそれがしが、この許されざる蛮行を止めるため、調停人として帝都よりわざわざ参上したものである。速やかに戦闘を停止し、沙汰を待て。」

 何だコイツ、いきなり来て喧嘩売ってるの?


「こちらはともかく、シュバイツァー軍の攻撃が止まない限り、戦闘をやめる訳にはまいらん。向こうの戦闘は止めたのか?」

「こちらが攻めておるのだから、こちらを先に止めるべきであろう!」

「馬鹿を申すな!こちらに抵抗せず死ねというなら今すぐ帰れ!」

「な!何を、ガキのくせに無礼な!不敬であるぞ!」

「使者のお帰りだ!大砲を撃って送り出してやれ!」


 まあ、現代なら日時を決めて停戦とかなんだろうけど、この時代、時計もあてにならないからね。

 ということで、追い返してやった。


 どうせ敵同然の使者だ。

 今さら追い返しても影響あるまい。


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