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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
207/1781

両軍の睨み合い

 さて、ここはロプスドールより西に位置する、シュバイツァー領オルガノ市。


 領都では身の安全が保証されていないことを知ったシュバイツァー男爵は、小規模ながら城壁を持つこの街に拠点を移し、陣頭指揮している。

 いや、これを陣頭というかどうかは知らないが。


「エンリコ、我が軍の状況は?」

「はい、エッセ河畔に陣取った我が軍の総数は1,500。敵は恐らく700を超えることはないと考えます。大将はバシュ殿、副将にはグナイゼナウ殿を充てております。」

「うーん、バシュはともかく、グナイゼナウに将が務まるのか?」

「やむを得ません。トレド殿はすでに撤退し、キールン殿は領地北に張り付いております。」


「トレドはどうした!怖じ気づいたのか!呼び戻せ!」

「すでに使いをやっておりますが、領地境を固めているようでして。」

 エンリコ・バッセの頭に巻かれた包帯が痛々しい。


「ヤツの800の兵があれば・・・しかし、何で1,500しか兵が残っておらんのだ?」

「農民兵の多くは逃亡したものと思われます。それにオツテンブルクは既に裏切り、トスパン、マルク=マリス、アッサム、アーレントとは連絡がつきません。」

「しかも、もうかなりの領地が占領されておろう。」

「おそらく1/4ほどは敵の手に落ちたのではないかと・・・」

「ええい、マズイ、マズイぞ、早く停戦調停人が来ないことには、大変な事になる。」



 そんな動きがありながらも4月30日、リンツ軍はエッセ川東岸に着陣する。


「川向こうにすぐ敵の陣がありますが、何か葦が邪魔で見えづらいですなあ」

「そうですね。何とか焼き払いたいですね。」

「しかも、こっちはちゃんと刈り払われとるし・・・」

「ええ、敵は準備万端ですね。夜襲を仕掛けて来ますかね。」

「五分でしょうな。見え透いた手ではあるし、実際、見通しが悪いのも事実。ただ、夜襲ではなく、夜間総攻撃を仕掛けてくるかも知れませんな。」


「そんなに浅いのでしょうか。」

「川底は泥が多いように見えるのう。しかし、浅瀬や橋を使えば出来んこともない。」

「一応は警戒し、地理的なものは至急、把握するとしましょう。」


 やや、準備不足な感は否めない。

 そして、敵情視察とこちらの陣構築に数日要した。

 その間、敵も動かず対峙していた。

 敵の意図は分からない。

 こちらの油断を誘っているのか、本当に夜襲を掛けるつもりなのか・・・


「で、こちらが攻める場合は?」

「もちろん砲撃から。そして当面は街への攻撃は禁止する。」

「了解ですぜ、坊ちゃん。」


 さて、いつ火蓋が切られるか。


挿絵(By みてみん)


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