緒戦、いや決戦?
帝国歴248年4月15日
エルハバード率いるリンツ軍本隊はコートに着陣し、敵に備える。
既に大砲を前方の山に担ぎ上げ、稜線上の木も伐採され始めている。
「しかし、男爵の関与が判明してからここまで、あまりに急なことで・・・」
「戦場では指揮官が代わった時に、しばしば起こることですぞ。そして、その指揮官の言うことを聞かんのが、旦那様です。」
「それは困りますね。」
「敵も味方も皆敵じゃー!は名言でしたぞ。」
あんまりだ、あんまりすぎる。
「敵影、峠から確認できたそうです。数はおよそ2,000。」
「この狭い街道に2,000とは、山を越えて奇襲とか、何か芸があれば面白いんじゃが。」
「では、砲兵に戦闘が始まるまで砲撃しないよう、伝えて下さい。」
「ほう、機先を制する訳ではないと。」
「ええ、敵の陣形が細長いなら、先に撃たず、戦闘が始まった後に、敵の後方へ撃ち込んだ方が効果があります。」
「なるほど、こちらは広い場所に鉄砲隊を並べておりますからなあ。寡兵であっても負ける気がしませんわい。」
そして翌日未明。
「敵が見えました!」
「よし、鉄砲隊は柵より前には絶対出るなよ。街道は狭い、適当に撃っても必ず誰かには当たる。日頃の訓練の成果、ご領主様に拝見してもらえ。」
「おぅっ!」
敵が山道を曲がって、眼前に現れる。
集落の入口付近に陣取る味方は、街道方向に一斉に射撃を始める。
敵は、集落入口のほんのわずかな広場で陣形を整えようとしたが、斉射を受けて退く。
そして山上から砲声が轟く。
山裾に遮られて見えないが、馬の嘶きが聞こえる。
大混乱しているようだ。
そして近くで爆発。
ここにきて地雷が破裂したようだ。
「ようし、敵は乱れた、騎馬隊を先頭に短槍隊、ワシに続け!」
騎馬隊と歩兵隊が街道沿い、鉄砲隊が街道の法面を進む。
私も騎乗して騎士団長に続く。
カーブを曲がるとすでに乱戦模様。そして・・・
「あっ!!」
そのまま落馬する・・・




