風雲急を告げる
「使者を追い返しましたが、よろしかったのでしょうか?」
「ほかにどうせよと?だいたい、貴様がしっかりしとらんからであろう。」
「そ・・・申し訳ございません。」
「まあよい。どうせあのままでは腹の虫が治まらんかったからのう。遅かれ早かれ、そうなっておったのじゃ。この機会に兵を起こし、一気に勝負を決める。」
「しかし、本当に大丈夫でしょうか?」
「ここが勝負どころじゃ。どうせ時間を掛けてもジリ貧じゃ。だが、向こうは寡兵、しかも血風は不在。今なら勝てる。」
「畏まりました。では、出陣の触れを出します。」
「エンリコよ、心配せずとも良い。我らの後ろには内務卿様が付いておる。卑怯にも我が領地に不意打ちを食らわして来た悪辣非道なリンツ家を撃退し、あの地を我が物としようぞ。」
「主のお心のままに。」
「まあ見ておれ。儂の勇姿とシュバイツァーの更なる飛躍を。」
「ではセバス、後の事は頼みました。」
「お気を付けて、坊ちゃん。」
「スーディルまではあっしが乗せて行きやしょうか?」
「いえ、フランクだけで十分です。ディゼルは父がもし帰ってきたら、使ってやって下さい。」
「お坊ちゃま。必ず、必ずご無事で・・・帰ってきて下さい。」
「ありがとう、ローサ。必ず勝って帰って来る。」
「では坊ちゃん、参りましょうか?」
「ああ、しかし、まさか誕生日プレゼントを着て初陣とは思わなかったな。」
「ワッハッハ!全てはこの日のため、ですぞ!景気よく行きましょうや!」
「じゃあみんな、行ってくる。」
スーディルに各地から次々と兵が集まってくる。
領民に対する動員も始まり、約1,000名が集まり、こちらに向かっている。
騎士団駐屯地内に本部が置かれ、騎士団長や騎士爵などが集まっている。
「ヘルツェル・ウェステン、ただ今戻りました。」
「ご苦労である。敵の状況は分かるか。」
「はっ、敵は領都ロプスドールに集結中であり、農民兵を含めると約3,000と推測されます。まだ、敵の攻撃目標は判明しておりませんが、恐らく、兵を分けるのではと。」
「そうだな、関所はどこも山間の狭い場所だからな。副団長の言うとおり、3手に別れてアッサムとオツテンブルクからも攻めるであろうな。」
「ではウェステン殿、引き続き索敵をお願いする。」
「承知。」
双方、徐々に緊張が高まる。




