盗人猛々しい
その日のうちにサッツがロスリー入りし、再度の打ち合わせ。
「分かりました。では、男爵のこれまでの行いに抗議し、賠償と再発防止を要求するのですな。」
「ええ、恐らくは知らぬ存ぜぬ、悪ければ門前払いでしょうが、こちらは全て誠実に手を尽くした、という事実を残すことに意義があります。面倒な役目ですが、よろしくお願いします。」
「ええ、分かりました。」
「しかし、何でこの時期にいきなり・・・」
「まあ、いきなり人数が倍になるというのは盗賊ではあり得ません。何か本格的な軍事行動に切り替わったように思います。」
「つまり、もう隠す気がないと。」
「まあ、突然開門するという、こちらの突拍子も無い作戦で起きた偶発的な結果、という線も可能性としてはございますが、50人規模で攻撃してきたということは、本気で落とすつもりではあったのでしょうな。」
「では、今回こちらに犯行がバレたことによって、違った動きになることも考えられますね。」
「ええ、バレなければ、もしかしたら状況は変わらなかったかも知れません。ただ、男爵側の準備は、裏工作を含めて完了していると考えた方が良いでしょう。」
「戦になる公算は?」
「麦の播種も終わっておるでしょうからな。短期決戦を目論んでおるなら、良い頃合いでしょう。」
「では、斥候と敵領内の諜報を強化しましょう。」
「そうですな。」
「では、私はすぐに出立しますので、御免!」
「戦かあ、嫌だなあ。」
「シュバイツァーは生粋の騎士ではございません。それほど心配なさらなくても。」
「でも兵力は相手がかなり上回っているんでしょう。」
「兵の数だけで決まるものではございませんし、もし戦になったとしても、こちらは関所で防戦することになります。」
「そうだね。最悪の場合、出陣するから、後の事はお願いね。」
「坊ちゃん、出陣されるおつもりですか。」
「うん。そりゃ嫌だけど、大将が出ないと士気が上がらないし・・・」
その後、シュバイツァーとの交渉は門前払いだったそうだ。
そして、敵領内で領民動員の動きが起きているとの情報が入る。
ああ、最悪だ・・・




