エルハバード、物騒な物を作ろうとする
帝国歴245年3月
ついに新商品の販売収益第一弾が入金された。
特許使用料110万ディリは既に前金で貰っていたが、今回は販売収益分配金20万ディリが入った。
今後、販売区域が拡大すれば、更なる収入アップが期待できる。
「これはなかなか好調な出だしとみてよろしいですな。」
「ロスリー市内だけでこれだからね。」
「しかもソロバンに至っては持ち運びができるので、行商人も購入するでしょうし。」
「行商人が自身で使えば、それも宣伝になる。」
「それも帝国内各所で。」
「最終的にいくら売れるか想像もつかない。」
「それに、ソロバンは程よく耐久性が低そうですからなあ。何度でも売れます。」
「そこは一部金属、あるいは補強材を入れて改良することにするよ。」
「そうすれは、更に高い値段で売れますな。」
「セバス、黒いよ。」
「ところで、先ほど商会長と話していたのは何だったのでしょうか?」
「うん、硫黄がどこかで入手できないか聞いてた。」
実は火薬の製造を目論んでいる。
材料はごくありふれた物だが、硫黄だけは火山の無い国内では入手困難なのである。
エル=ラーン山脈周辺を当たっても発見できなかった。
「その結果、商業ギルド国の商人であれば入手できるとのことだった。火山地帯は大陸中央部だからね。ただし、用途があまり無いらしく、安いけど流通量は少ないみたい。」
「私も硫黄などというものは初めて聞きました。今度は何を作られるおつもりで?」
「火薬だよ。セバスが知らないということは、本当にこの大陸に火薬は無いみたいだね。火を付けると大きな音を立てて破裂し、衝撃で何でも破壊できる物だよ。武器や坑道を掘るのに使える。」
「そんな物が作れるのですか・・・どのくらいの衝撃があるかは分かりませんが、もしかしたら世の中を大きく変える物かも知れません。」
「今回製作するのは、黒色火薬という一番簡単に作れるものだけど、薬品製造工場さえ出来ればダイナマイトっていう、もっと強力な物も作ることができるよ。」
「想定ではどのくらいの威力があるのですか?」
「使用する火薬の量次第だけど、最終的には、投石機以上の威力の兵器を作りたい。そのための投擲用兵器も、鉄の大量生産が可能になれば原理と構造は知っているので、割とすぐ作れるよ。」
「いやはや恐ろしいもので・・・いや、もう驚くまいと思っておりましたが、坊ちゃんといると驚くことばかりです。」
「そうはいっても多分、東の大陸には、似たような物が既にあると思う。」
「では、鍛冶職人の育成と鉄の製造施設建設を急ぎましょう。」
「お金も入りはじめたしね。」
いよいよ兵器開発まで始まる。




