表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
182/1781

一つだけ足りないモノ

 リンツ家は大変立派な貴族である。

 もとい、立派かどうかは別にして、貴族としての体裁は保っていると思う。

 いや、多分・・・


 ほんの数年前までは、それすら怪しく「ちょっとマシな庶民」程度の生活水準であったことを除けば、どこからどう見ても貴族であったはずである。


 しかし、ここ数年で莫大な富と、先進的な生活を手に入れ、借財も減り、その姿を大きく変えたことは事実である。

 しかし、屋敷がボロい。

 市内の民家がどんどん綺麗になってくると、そのみすぼらしさが際立ってくる。

 いとあはれなのである。


 ということで、屋敷内を改めて点検してみる。

 決して暇なのでは無い。

 冬になると視察も減るし、事務仕事や開発も部下がやってくれるようにはなったが、今でもたいへん多忙の身である。

 まずは1階から。


「玄関前ホールは・・・暗いね。昼でもお化けが出そうだ。」

「ええ、私もよく躓きます。」

「右手の廊下は特に暗いね。」

「朝の時間は反対に、左手が暗いです。」


「応接室のソファー、穴、空いてるね。」

「ええ、ネズミさんがかじったのでしょうか?」

「やっぱり出るの?ネズミ。」

「前に一度だけ。ジョセフさんが食べ物はしっかり管理して下さっています。」

「そういえば、調理場も狭いしね。大体、何で竈が2つしかないんだ。次の屋敷は竈は4つ、石窯を別に作ったからいいけど。」


「食堂に来ましたね。」

「ここも暗いね。夜と変わらないよ。」


 中央ホールの西側は、執事執務室、オルガさんやローサの個室、広間があるだけなので2階に上がる。西側は客間というか、客人の宿泊用の部屋が並ぶ。


「廊下の奥は雨漏りするんだよねえ。」

「ええ、お掃除が大変です。でも、雨漏りはどこのおうちでもするものでは?」

 違うよ。


「でも、修理しようにも、取り壊した方が早いって言われるから、未だ手つかず。」

「東側はどういたしますか。」

 そこには私の部屋と執務室、父の部屋と寝室があるが、そこは別にいい。


「一応、裏手も見てみようか、車庫とか馬小屋とか・・・」


 結局、良いところなど、一つも無いことだけは分かった。

 まあ、どうせ数年後には取り壊すことだし、直す価値もないので、騙し騙し使って行こう。

 今日も異状無しだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ