みんな屋敷の一員
今日はローサの誕生日。
この屋敷に来てもう2年、そして12才になった。
みんながプレゼントを渡し、テーブルには豪華な食事が並ぶ。
ゲルハルトの飾り付けも健在だ。
それどころか、回を重ねるごとに手が込んできている。
「皆様、本日は私のために、このような豪華なお食事会と、心温かいプレゼントをいただき、ありがとうございます。」
「あらあらまあまあ。」
「ローサ、練習した甲斐がありましたね。よくできました。」
「そうね、本当にいいメイドになったわね。」
「姉さんはもっと頑張ってね。」
「ガッハッハ!さすがウチの長女だ!」
「そうですな。ゲルハルトと関係なかったのが、幸いしましたな。」
「おめでとう、ローサさん。今日は特別メニューです。」
「こちらは私が作ったお菓子になります。」
「おめでとう、ローサ。もうすっかりうちの一員だね。さて、食事にしましょう。ジョセフ、これは初めてのメニューだね。説明をお願いしてもいいかな。」
「あ、ありがとうございます。これは寒い時期に合うように作りました、牛肉とキノコのブラウンソース煮込みです。牛肉は敢えてミートボールとしており、タイムやローリエなどを使い、一日煮込んで独特の風味を出してみました。どうぞ、ご賞味あれ。」
ジョセフ、よかったね。
「おう!遅れて済まんな。ローサちゃん、これ、ワシと母ちゃんからじゃ。」
この人も最早、屋敷の一員だ。
「ほれ団長。今日は酒もタンマリあるぞい。」
「ゲル。また飲み過ぎでお坊ちゃまにご迷惑掛けるんじゃありませんよ。」
「ホッホッホ。本日は、私も少しいただきましょうかな。」
「では、お注ぎします。」
「これは、主役に注いでいただくとは、ありがとうございます。」
「姉さんも浴びるように飲まないの!」
「いいじゃない!たまには旦那から離れてお酒を楽しみたいこともあるの!」
アイリーンさんに何があった?
「ローサ、取り分けたから、これも食べてみて。」
「あ、ありがとうございます。お坊ちゃま。」
「しかし、祝い事のたびに浴びるほど飲めるなんて、いい屋敷ですなあ。ガッハッハ!」
「おっちゃんはいつもどうやってイベントを嗅ぎつけるの?」
「嗅ぎつけるとはまた人聞きの悪い。駐屯地まで酒樽を開ける音が聞こえるから来てるだけじゃぞ。」
「門衛が時々全力で走ってますね。」
「どうせそんなこったろうと思ったよ。」
「彼らは年中無休ですからな。」
「ご相伴にはあずかれないのに、気の毒なことだなあ。」
「じゃが、門衛が一番楽な仕事でもあるからな。」
「ああ~、うち、訓練厳しいもんね。」
「私は、騎士団長様が来てくださると、その、とても嬉しいです。」
「さすがローサちゃん。ワシの気持ちを唯一汲んでくれるワイ。」
「まあ、今日は一つ謎が解けたことだし、ローサに免じてサボって来た事はお咎め無しとしよう。」
「これからもお咎め無しでお願いしますぞ。未来のご領主様。」
こうして、いつもの賑やかな屋敷のパーティーは続く。
外は雪、なんてことは、ここロスリーでは起こらない。
でも、ここだけは暖かい。それは本当の話。




