悔悟の日々
「お父様、遅くなりまして申し訳ございません。もう、お話しできないものと・・・」
「いいんだよ。よく戻って来てくれたね。それだけで十分だ。これでもう、思い残すことは何も無い。」
「私も毎日祈りを捧げておりました。願いが通じました。」
「そうだね。フローレンスの力だよ。それで、上半身を起こしてもらってもいいかな?」
「はい、もちろん。」
彼女は私の後ろに回り、背中を支えてくれる。
「昔はこうして、フローレンスを抱っこしてあげてたのに、今やこの有様だよ。」
「抱っこには変わりありませんよ。」
「それで、手をお前の頭に乗せてくれないかな。もう、腕も上がらない。」
「こう、ですか?」
「ああ、お前は本当に良く頑張った。頭ナデナデの刑だ。」
「お父様・・・でも、私は、貴族の家に生まれながら、その責から逃げ出し、お父様の役に立たなかった不孝の娘です。」
「私はそうは思わないし、フローレンスはたくさんの人を救ってきたじゃないか。収穫祭の祈りは、父さんにとっても自慢なんだぞ。」
「お父様、こんな時に、こんなことを申して、まことに申し訳ございません。本当は私、お父様のことを心からお慕いしておりました。父としてではなく、です。私は教会に懺悔するために逃げた罪深い人間なのです。偉くなどないのです。」
「フローレンス、お前はとても優しく純粋で、善良な子だよ。」
「いいえ、私は毎日懺悔を続け、未だ贖罪を終えることの出来ない未熟者です。」
「フローレンス。私はかつて言ったね。たとえ神が許さなくても私が許すと。それでも神が文句を言うようなら、今から行ってぶん殴って来てやる。」
「お父様・・・」
「私がこの世で最も愛した女性ローサ。その隣に、唯一並び立つことを認められた我が子フローレンスよ。お前は間違いなく神の愛し子であり、私とローサの大切な人だ。お前は誰も傷つけてなどいないし、何も破っていない。そして、多くの人を救い、その希望だ。顔を上げなさい。迷い無く前に踏み出しなさい、フローレンス。」
「お父様~!」
こういうの、いつ振りだろう。
ザゴルに出陣する前だったかなあ・・・
「本当に、戻って来てくれてありがとう。親しかった人には全員に会いたかったけど、最後のピースが揃った。」
「ラストが私なんかでよろしかったのでしょうか?」
「最高だよ。欲を言えば、セバスたちの墓参はしたかったけどなあ。でも、向こうで会えるか。」
「まだ、早すぎます。」
「おや?凄い足音が。」
「そうですね・・・」
誰一人守ろうとしない・・・




