空を舞うには、まだ早いか・・・
「さて、じゃあ、ベルにもっと素晴らしい旅のネタを提供しようかな。」
「エル君?まさかまだあるのですか?」
「ああ、今まではとても無理だったが、アイツの大発見のお陰で出来そうなものが物があるんだ。」
「それは是非教えて下さい。」
「鳥のように自由に空を飛べる乗り物だよ。」
「それは、以前に言っていたものですか?」
「ああ、名付けて飛行機だ。」
「まさか、てっきり空想のお話かと思っておりました。」
「こうなることが分かってたら、基礎開発くらいはやっとけばよかったな。いくつか開発しないといけない物があるんだ。ペンを貸してくれないかい。」
「書けますか。」
「細かいのはもう無理。だけど大まかな絵ならまだ描ける。説明部分は他の誰かに記録してもらえるかな。」
「はい、すぐに誰か呼んできますので、お待ちを。」
屋敷に常駐しているヨッへム君ががやって来た。多分、大丈夫だろう。
「まず、この絵に描いた物がスパークプラグという。簡単に言うと電気の力で火花を起こす物だ。これで油に着火するんだ。」
「火を付けるのですか?」
「いや、油を霧状にした物を爆発させる。そのくらいの力が無いと空を飛ぶほどの力を得られないし、ベルの発見した油はそれが可能なほど強力なものだ。」
「分かりました。では、そのスパークプラグの説明を。」
「これが外観と断面図だ。この一番上の部分をターミナルと言い、ここに強い電流を流す。材質はそうだね。ニッケルなんかで良いと思う。この部分が中空になっていて碍子という、漏電を防ぐために陶器製だ。このくびれは重要だから省略しないでね。その中に鉄製の軸を入れ、ターミナルとニッケルの筒の中に銅線を通した電極とを繋ぐ。脚部は酸化アルミ製だ。そしてここが空気漏れを防ぐガスケット、アース、破損防止のハウジングだ。これは研究所の者が知ってる。次に内燃機関、これが蒸気タービンの代わりになる。」
「でも、蒸気タービンのピストンに似てますし、金管楽器にも似てます。」
「ああ、だから必ず作れるよ。」
「でも、中の構造はサッパリです。説明、お願いします。」
「その絵のピストンの上がりきった所を上死点、逆が下死点という。1回目の下死点への動きに連動して燃料と空気の混じった気体がシリンダー内に吸引され、ピストンが上死点に向かう時に吸気弁が閉じられ気体が圧縮される。上死点に達した瞬間にプラグの火花で爆発させ、ピストンを押し戻す、今度は下死点に向かうのに連動して反対側の弁が開き、再び上死点に戻る動きにより、排気される。これを繰り返す機械を作るんだ。」
「ピストンが2往復で1セットなのですね。」
「さすがです。弁をピストンの動きに連動させる仕組みは、工廠で作れるはずだよ。」




