表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンツ伝  作者: レベル低下中
第七章 晩年編
1760/1781

しなやかな人

 最近は毎日、ローサとアーニャさんが交代で添い寝状態だ。

 まあ、私自身、いつ容態が急変するかなんて分からないのだから、そうなるのだが、何だか申し訳ない。


 そして、隣に今、彼女がいる。


「おはようございます。相変わらずお早いですね。お身体は痛くありませんか。」

「うん。時間通りに処方すれば大丈夫だよ。本当にゴメンね。」

「いいえ、私の方が心配で、エル君を一人になんてできませんから。」

 彼女は私に身体を寄せてくる。互いに額を合わせる。


「随分お痩せになりましたが、それでも今日が迎えられて嬉しいです。」

「本当に済まないねえ。本来なら、結婚後50年が私の品質保証期間だったのに。」

「まあ、エル君がまた面白い話を始めました。そう言えば以前、プロなんとかのお話をされておりましたね。」

「ああ、私もこの世を去るに当たってのプログラムは作動中だよ。」

「とても寂しいことですが、エル君は全く取り乱しません。」


「そういうことなんだよ。アーニャさんやローサと別れるなんて、嫌に決まっているし、本来なら我慢できるはずが無い。でも、それを受け入れる強い力が働き、私は平静を保っている。」

「でも、私はそのプログラムが働いていません。」

「そうだね。だから別れはいつも悲劇だ。」

「でも私は必ず、その悲劇を乗り越えて思い出にして見せます。」

「さすがはアーニャさんだ。」

「もちろん、許されるなら、エル君とご一緒したいですけど。」

 そんな短絡的なことを、彼女はしない。

 私は彼女を抱き寄せ、頭を撫でる。


「嬉しいです。でも、私の頭を撫でる方は、エル君しか居ません。残りの人生、頭ナデナデ抜きの生活になってしまいます。」

「まあ、ローサとアルマさんはいるけど。」

「エル君のが無くなります。これは大きな違いです。」

「じゃあ、腕が上がらなくなるまでは、頑張らないとね。」

 いつの間にかアーニャさんは泣いているらしい。顔を布団に埋めて見せないけど・・・


「ホント、ゴメン・・・」

 それだけ言うのが精一杯だった。後は静かに頭を撫でるのみ。


 すると、しばらくして落ち着いたのか、顔を上げる。すでに、いつもの優しい笑顔だ。

「元気、出ましたから。」

「じゃあ、今日も一日、思い出作りだ。」


 何だろう、青春な感じ、出てるよね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ