運命の誕生日
2月9日は私の誕生日、今日で49才になった。
そう、あの日の私と同じ年齢である。
そう言えば、久しぶりにあの頃のことに思いを馳せた。
思えば驚くほど遠い日の話である。
そして、そのくらい私は、この世界に馴染んでしまっていたのである。
そんな感慨に耽りながら、お茶を飲む。
そこにアーニャさんとローサがやって来て、いつもの、そしてとても穏やかな、いつもの午後が始まる。
「エル君も来年は50才です。追いついてきています。」
「今度こそ追い抜くよ。先におじいさんになるからね。」
「あんまり置いていかないでくださいね。」
ここで突然、強い吐き気を催し、何か出た。
いや、吐瀉物ではない、血だ。
「エル君、こ、れは・・・」
「ご主人様!大丈夫ですか!」
吐血の量は大したことない。ちょっと本格的な鼻血程度だ。
「大丈夫・・・大丈夫だから心配しなくていいよ。」
アーニャさんは駆け出し、急いでヨッへム君を病院に走らせる。
私はローサによってベッドに寝かされる。このコンビは最強だ。
でも、ローサはすでにグチャグチャだ・・・
「ご主人様に何かあったら、私は、もう・・・」
「滅多なことを言うもんじゃないよ。それに一応、こうして生きてる。」
とにかく冷静になって自分を落ち着かせることが大事だ。
なんて、普通ならそうはならないはずだが、何故か今はそう考える余裕がある。
これも、さっき昔を思い出していた効果か?
それに、何があろうとここにいる二人をこれ以上心配させてはいけない。
「先生方が到着しました!」
「何と、オイゲン先生だけじゃなく、クリスティアン先生にローマン先生まで。患者は一人ですのに、お手数をお掛けしてしまってすいません。」
「何をおっしゃいますか。ご隠居様の一大事に来ない訳にはまいりませんよ。」
「そうです。恩を返さないのは医師の名折れですよ。」
「それで、ご隠居様。お身体の具合の悪いところは、分かりますか。」
「ここ2ヶ月ほど、胃の調子が悪いです。吐き気とか。」
「血便は出ていましたか?」
「いえ、多分無かったかと。」
この後も長い診察が続いたが、お陰で落ち着いて来た。
と同時に、私のこれからを考える余裕も出てきた。
「先生、ご主人様はどうなのでしょう。治りますよね。」
「・・・いや、まだ、どのような病気なのか、一度病院に戻って調べてみないと何とも。また、薬も良い物を調合しないといけませんね。」
「先生、私なら大丈夫です。取りあえず落ち着いていますから、明日でも大丈夫ですよ。」
お三方に目配せする。
意図は通じたようだ。
「分かりました。取りあえず容態が急変するような類いのものでは無いでしょう。一応、胃薬と痛み止めを処方しますので、少しお時間をいただければと思います。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」




