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リンツ伝  作者: レベル低下中
第七章 晩年編
1752/1781

運命の誕生日

 2月9日は私の誕生日、今日で49才になった。

 そう、あの日の私と同じ年齢である。


 そう言えば、久しぶりにあの頃のことに思いを馳せた。

 思えば驚くほど遠い日の話である。

 そして、そのくらい私は、この世界に馴染んでしまっていたのである。


 そんな感慨に耽りながら、お茶を飲む。

 そこにアーニャさんとローサがやって来て、いつもの、そしてとても穏やかな、いつもの午後が始まる。


「エル君も来年は50才です。追いついてきています。」

「今度こそ追い抜くよ。先におじいさんになるからね。」

「あんまり置いていかないでくださいね。」

 ここで突然、強い吐き気を催し、何か出た。

 いや、吐瀉物ではない、血だ。


「エル君、こ、れは・・・」

「ご主人様!大丈夫ですか!」

 吐血の量は大したことない。ちょっと本格的な鼻血程度だ。


「大丈夫・・・大丈夫だから心配しなくていいよ。」

 アーニャさんは駆け出し、急いでヨッへム君を病院に走らせる。

 私はローサによってベッドに寝かされる。このコンビは最強だ。

 でも、ローサはすでにグチャグチャだ・・・


「ご主人様に何かあったら、私は、もう・・・」

「滅多なことを言うもんじゃないよ。それに一応、こうして生きてる。」


 とにかく冷静になって自分を落ち着かせることが大事だ。

 なんて、普通ならそうはならないはずだが、何故か今はそう考える余裕がある。

 これも、さっき昔を思い出していた効果か?

 それに、何があろうとここにいる二人をこれ以上心配させてはいけない。


「先生方が到着しました!」


「何と、オイゲン先生だけじゃなく、クリスティアン先生にローマン先生まで。患者は一人ですのに、お手数をお掛けしてしまってすいません。」

「何をおっしゃいますか。ご隠居様の一大事に来ない訳にはまいりませんよ。」

「そうです。恩を返さないのは医師の名折れですよ。」


「それで、ご隠居様。お身体の具合の悪いところは、分かりますか。」

「ここ2ヶ月ほど、胃の調子が悪いです。吐き気とか。」

「血便は出ていましたか?」

「いえ、多分無かったかと。」


 この後も長い診察が続いたが、お陰で落ち着いて来た。

 と同時に、私のこれからを考える余裕も出てきた。


「先生、ご主人様はどうなのでしょう。治りますよね。」

「・・・いや、まだ、どのような病気なのか、一度病院に戻って調べてみないと何とも。また、薬も良い物を調合しないといけませんね。」

「先生、私なら大丈夫です。取りあえず落ち着いていますから、明日でも大丈夫ですよ。」

 お三方に目配せする。

 意図は通じたようだ。


「分かりました。取りあえず容態が急変するような類いのものでは無いでしょう。一応、胃薬と痛み止めを処方しますので、少しお時間をいただければと思います。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


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