アル君、キース君と仕事の話
いや、私は隠居してるんだが・・・
「それで今回、タルタ港の拡張工事完成に伴って、エネル商会にミルヒシュトラーセ号を現在の保有数10隻から20隻に増やすよう、要請してるところなんだよ。」
ちなみに、エネル商会は、東大陸航路の船をシュテルネンゼー号と名付け20隻、国内航路を含む中央大陸航路用としてポラリス号を20隻運用している。
「それで、うちにも製品の増産を、ってこと?」
「そう。もっと大陸中央に進出したいんだよ。ゆくゆくはブルクハルトやマティアスにレント王国や教皇国方面の事業をさせたいし、悲願のラウル商会超えを達成したいんだ。」
「そのための生産、輸送力強化ねえ。」
「今、ご領主様が力を入れている南大陸の港湾整備だって、そもそもの目的はそれでしょ。だから、エル君とこも工場新設とかして、生産力を増強して欲しいんだよ。」
「まあまあ。それは分かるし、いずれはそうなるだろう。でも、隠居の身では決定権もないし、現在の設備投資や工場進出計画も詳しい訳じゃ無い。」
「そこを何とか、お願い。」
「まあ、フランやサラさんに話してはみるよ。ただ、最近は工場誘致の話は各地から来ていてね。どこかを立てると他が怒るって状態なんだ。ただでさえ公爵領とかにしかなくて、”身内びいき”なんて言われてるんだから。」
「身内びいきは事実でしょ。」
「うん。紛れもなく事実だ。でも、昔と違ってさあ・・・」
「他領でなくてもロプスドールとかノイアルフハイムに作ったっていいだろ。」
ノイアルフハイムは領外なんだけど・・・
「まあ、話はするよ。それにエネルだって、いきなり10隻増やすのは、船員の確保を含めて大変だよ。」
「それは分かってるよ。でも、やれば必ず勝つ戦なら、打って出るべきなんだ。」
「どうどう。それで、キース君は?」
「ああ、タルタが終わったから、次はモジョロを本格的に整備するんだろ。それもウチでって思ってな。」
「まあ、通訳とか現地に精通した作業員の確保を考えれば、他の選択肢は無いと思うよ。」
「さすがはエル君。話が分かる男はいいねえ。」
「いや、そういう訳じゃ無いけど・・・」
「ほらぁ、10隻じゃ済まないかも知れない。工場の新設や拡張は必要なんだよ。」
「アルベルト様、キース様、お茶でもいかがですか?」
救いの聖女様が現れた。
「おお、マダム・ローサ。本当にいつまでもお美しい。是非、いただきます。」
「そうそう。僕も今日ここに来た一番の理由は、ローサ夫人に会うためなんだよ。」
やっぱりお前ら、仕事しろ!




