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リンツ伝  作者: レベル低下中
第七章 晩年編
1732/1781

何か増えてるんだけど・・・

 帝都に到着した2日後、収穫祭の日。


 ローサがコリンさんの手を引いて、祭壇に向けて歩いている。

 そう、三人である。


 どうやら、コリンさんの礼拝を見た教会関係者が、彼女を「盲目の聖女」と銘打って収穫祭の礼拝に出させ、広く喧伝した結果のようだ。


 これが21世紀なら、障害者に勇気を与えるとか、良い効果もあるのだろうが、ここは、障害者が無かった事にされかねない時代だ。

 単なる見世物以外の効果など、無いのでは無いかとすら思える。


 それだけではない。

 宗教勢力と世俗領主の間には、常に一定の緊張感がある。

 共に権力機構であり、相容れない部分を持つ宿命的な関係である。


 特に今の当家は何かと耳目を集める存在である。

 辺境の子爵並みと馬鹿にされていた時代から聖女であったローサや、既に世俗を捨てたフローレンスと違い、次期皇后の母となるコリンさんについては、何の申し開きもできない。

 教会の政争に巻き込まれたり、教会との癒着を疑われたり、教会と帝国が再び対立したときの身の振りなど、良い事は何も無いのである。


 第一、今回フランシスを帝都に行かせたのは、ベアトリクスを城に上げるためであり、妻を見世物にするためではないはずだ。


 ということで、昨晩はアーニャさんと二人で、軽率極まりないフランシスに説教を食らわせてやった。

 まあ、説教という表現に止めておくが、そのお陰で、今日のフランは元気が無い・・・

 そんな事とは別に、祭礼は滞り無く進む。


 ローサとフローレンスの所作の見事さは、今更であるが、コリンさんもこの15年、ローサの隣で祈りを捧げて来たのである。

 そんな彼女は、ローサの所作を何らかの感覚により分かっているのだろう。

 全くシンクロしている。


 本当なら、立ち上がる所作一つでも細心の注意を払わないと困難なのだが、祈りを捧げている彼女は、そんな不安を微塵も感じさせない。

 そう、三人の見事な儀礼と長い祈りは、例年以上の神々しさと迫力を感じさせるものがあった。

 これには、これまでの祈りを見慣れていた帝都民もビックリだろう。

 コリンさんは、聖女ではないが、それに匹敵するような人物だし、その生活も慎ましやかなものである。


 しかも何か、彼女たちの背中がやけに輝いていると思ったら、祭壇の各所に鏡が置かれていて、陽の光を反射させている。

 というか、よく見たら、祭壇下に日光を金属板で反射させている教会関係者までいる。

 そこまでするか・・・


 まあ、何とか祭礼は終わり、三人は群衆の何とも言えない視線から解放される。



「お疲れ、三人とも見事だったよ。」

「はい、今年もよい祈りができました。皆さん、ありがとうございました。」

「ではヴィレ、三人を帝都邸で休ませてくれる?」

「父上はどうされるのですか?」

「アーニャさんとフランとで行くところがあるんだ。先に帰っておいてくれ。」


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