企業団の発展
「ご隠居様、こちらが最新の製品リスト、最終人事案、決算試算表となります。」
「相変わらず早いねえ。政庁の何倍も業務量あるのに・・・」
「いいえ、事務職員を5名も増員いただきましたので、今年は非常にスムーズに業務が進捗いたしました。」
「製品リストは増えたねえ。」
「ええ、ロスリー商会やアスペル商会との製品企画会議や消費モニター制度の効果です。このようなことを思い付くご隠居様は、やはり凄いと思います。」
「いや、私はサラさんのとんでもない頭脳の方が凄いと思うよ。それで、人事はそんなに大きなトピックがあったっけ?」
「ええ、昨年末に発覚した、レーゼル製紙工廠の横領事件による処分に伴う人事が、今年のメインとなります。」
「ああ、そういやあったねえ。それで?第二製紙からの補充が多いね。」
「はい、工廠長や班長など、幹部職員6名を解雇しましたが、やはり公爵領では、これに代わる人材もなかなかおりませんし、領内製紙工廠からの昇任を軸に対応せざるを得ないと考えました。」
「レーゼルには化学工廠と食品加工工廠もあるから、幹部ならやり繰りできたんじゃない?」
「はい。ただ両方の工廠幹部も派遣年限になっておりましたので、領地に帰さざるを得ませんでした。残念です。」
「じゃあ、レーゼルの団地は工廠長総入れ替えなんだねえ。分かった。了承するよ。」
「良かったです。安堵しました。」
「そうだね。人事って、これだけ人がいるのに、現ポスト在席期間や本人の希望、適性、職位、公平性や今後の育成まで考えると、信じられないくらい選択肢がないからねえ。一人コケると全体が行き詰まる。」
「そうなんです。ダメ出しされたらどうしようかと思いました。」
「サラさん優しいから、人事だけは苦手っぽいね。」
「苦手なものは、たくさんございますよ。」
「そうかなあ。仕事も家庭も子育ても、ちゃんと結果出してるじゃないか。デリアさんとアルバン君なんて、将来どうなっちゃうんだろうってくらい末恐ろしいよ。」
「ありがとうございます。それと、これが決算予測です。」
「これは文句なしに得意分野だね。うん。これはアーニャさんにお任せ。」
「ご隠居様はもしかして、数字は苦手ですか。」
「う~ん、アーニャさんには敵わないよ。化学は大好きなんだけどね。」
「そうなのですね。安心しました。」
「私は欠点だらけの人間だよ。サラさんなら安心しきってても問題ないと思うけど。」
「いいえ、私から見たご隠居様は完璧です。」
私は、しばしばこういった過大評価をされる・・・




