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リンツ伝  作者: レベル低下中
第七章 晩年編
1725/1781

見送る立場

 さて、城に召されるベアトリクスと学校に戻るローゼたち帰省組が出発する時が来た。

 今回は、フラン夫妻、ヴィレ夫妻、ルーデル・トマス夫妻も帝都に行く。

 もしかして、私たち三人が屋敷で見送る側になるの、初めて?


「ベアトリクス、アウレリア、身体に気をつけるのですよ。」

「お子ちゃま軍団12名ではしゃぎすぎるなよ。」

「お祖父様、わたしたちはもう、お子ちゃまではありません。」

「ホルストさんや、それはアルバン君みたいな人が、初めて言えることなのだぞ。」

「そうですよ。あなたのそういうところは、フランそっくりです。」

「お母様、何もそこだけ私の名が出て来なくても・・・」

「さあさあ、今日は一気にノイアルフハイムまで疾走するのでしょう。いってらっしゃい。」


 馬車はいそいそと正門を出て行く。



「ウフフッ、お屋敷に子供がいなくなってしまいました。」

「まったくだ。コレットさんとこのヴィリー君だけが残った。」

「でも裏のお屋敷からエルンスト君たちが遊びに来ます。」

「彼らの名前を覚えるいい機会だな。」

「本当ですよ。彼らだってきっと、リンツ家の将来を支える人材になります。」

「そうだね。帝都邸や迎賓館みたいに、人が足りない施設も多いからね。」


「でも、今回は陛下がご配慮くださって、ありがたかったです。私の時は2年間、家族も接見禁止だったのですから。」

「ああ、里心が付くとかなんとかで。」

「ええ、さすがに今でも、あれは辛かったです。アルマがいなければ絶対に無理でした。」


「今回は貴族学校組が今後何年も続くから面会者も多いし、私たちだって会えるし、リサさんたちも協力してくれるから、前回のようにはならないと信じてる。」

「ええ、メリッサにも足繁く帝都に行くよう、言っておきますわ。」


「でもまあ、これで当分は夫婦水入らずだ。」

「そうですね。このお屋敷に嫁いできた時のようです。」

「ローサと三人。さらに、仕事はシュテファンに押しつけ。」

「ご隠居様・・・」

「冗談だよ。少しは手伝ってやるよ。まあ、少しだけど。」

「一人では、自信がございません。」


「まあ、分量が多いからな。でも、予算は終わったし、決算はまだだし、いいじゃないか。」

「それはそうですけど・・・」

「ということで、私たちはお茶にするからな。邪魔するなよ。」

「はい・・・」


 いいじゃないか。ご隠居だもん。


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