見送る立場
さて、城に召されるベアトリクスと学校に戻るローゼたち帰省組が出発する時が来た。
今回は、フラン夫妻、ヴィレ夫妻、ルーデル・トマス夫妻も帝都に行く。
もしかして、私たち三人が屋敷で見送る側になるの、初めて?
「ベアトリクス、アウレリア、身体に気をつけるのですよ。」
「お子ちゃま軍団12名ではしゃぎすぎるなよ。」
「お祖父様、わたしたちはもう、お子ちゃまではありません。」
「ホルストさんや、それはアルバン君みたいな人が、初めて言えることなのだぞ。」
「そうですよ。あなたのそういうところは、フランそっくりです。」
「お母様、何もそこだけ私の名が出て来なくても・・・」
「さあさあ、今日は一気にノイアルフハイムまで疾走するのでしょう。いってらっしゃい。」
馬車はいそいそと正門を出て行く。
「ウフフッ、お屋敷に子供がいなくなってしまいました。」
「まったくだ。コレットさんとこのヴィリー君だけが残った。」
「でも裏のお屋敷からエルンスト君たちが遊びに来ます。」
「彼らの名前を覚えるいい機会だな。」
「本当ですよ。彼らだってきっと、リンツ家の将来を支える人材になります。」
「そうだね。帝都邸や迎賓館みたいに、人が足りない施設も多いからね。」
「でも、今回は陛下がご配慮くださって、ありがたかったです。私の時は2年間、家族も接見禁止だったのですから。」
「ああ、里心が付くとかなんとかで。」
「ええ、さすがに今でも、あれは辛かったです。アルマがいなければ絶対に無理でした。」
「今回は貴族学校組が今後何年も続くから面会者も多いし、私たちだって会えるし、リサさんたちも協力してくれるから、前回のようにはならないと信じてる。」
「ええ、メリッサにも足繁く帝都に行くよう、言っておきますわ。」
「でもまあ、これで当分は夫婦水入らずだ。」
「そうですね。このお屋敷に嫁いできた時のようです。」
「ローサと三人。さらに、仕事はシュテファンに押しつけ。」
「ご隠居様・・・」
「冗談だよ。少しは手伝ってやるよ。まあ、少しだけど。」
「一人では、自信がございません。」
「まあ、分量が多いからな。でも、予算は終わったし、決算はまだだし、いいじゃないか。」
「それはそうですけど・・・」
「ということで、私たちはお茶にするからな。邪魔するなよ。」
「はい・・・」
いいじゃないか。ご隠居だもん。




