黒の主宰パーティー
さて、夜は陛下主催のパーティーだ。
バーナード卿は説得されたらしく、ウェルネス大公国の建国と大公就任が高らかに宣言され、会場は大いに盛り上がった。
ちなみに、ホルストの成人の儀が既に終っていることを陛下に伝えたら、また怒られた。
やったの、フランなのに・・・
「いやあバーナード卿、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。エルハバード様。」
「いや、もう大公殿下の方が偉いのですから。」
「いえ、私も15年前までは子爵に過ぎなかった者ですから。」
「それを言ったら私だって、30年前は、ここに居る方々から子爵並と呼ばれておりました。」
「それもこれも、全ては陛下とエルハバード卿のお陰です。ウェルネス人にとっては、考え得る中で最良の結果でしょう。本当にありがとうございました。」
「それは、どういたしましてです。」
「エルハバード卿!」
うん?この声って、まさか・・・
「おお!これはこれは、バーナード卿もお久しぶりです。」
「アントン卿。どうしてって、その徽章・・・もしかして。」
「はいっ!11月1日付けをもちまして、軍務卿に昇進いたしました!これも全てエルハバード卿のお陰でございます。」
「これは、おめでとうございます。本当に出世してしまいましたね!」
「はい。まあ、私も今年度一杯で退官ですので、最後の花道を飾らせていただいた人事なのですが・・・」
「いいえ、軍務卿なんて、お情けでなれる役職などではございません。大臣ですよ、大臣。陛下を除けば大陸一の軍の頂点ですから。」
「本当に、ありがとうございます。私はただ、エルハバード卿の後ろを付いて回っていただけではありますが、これで、息子の代には伯爵も夢ではなくなりました。」
「ええ、亡き師も喜んでいることでしょう。」
「本日はどうしてもお礼に伺いたくて、参上仕りました。」
「いやいや、頭をお上げ下さい。少なくとも私は無位の隠居に過ぎませんから。」
「いえ、血風の子にして”不敗将軍の弟子”、エルハバード・リンツ前辺境伯様でございます。」
「何だエルハバード、随分大仰な名を名乗っておるな。」
「へ、陛下。こ、これは、し、失礼いたしました。」
「アントンか。苦しゅうない。戦場での此奴の働きぶり、これからもじっくり聞かせてもらうぞ。」
アントン様、よかったですねー・・・




