ウェルネス大公
さて、今日は陛下主宰パーティーだが、何故か朝から呼ばれた。
「おお、エルハバードか。良く来た。」
「陛下、何か火急の用件でもございましたか?」
「まあ、急ぐと言えば急ぐが、そちには先に伝えておこうと思ってな。」
「はい。承ります。」
「実はな、バーナード・フェアフィールド伯爵を大公に任じることにした。まだ、本人は知らんがな。既に帝都入りしておる。」
「それはまた、どのような事情で。」
「うむ。実は夏にウェルネスで元国王一派による反乱があってな。その鎮圧に功績があったのだ。最初から話すが、トラスタタル連邦でザゴル帝国に対する反乱があったことは知っておろう。」
「はい。各国で同じような動きが起きているとも聞き及んでおります。」
「その際に旧ウェルネス王家が加担してザゴル排除に功があったらしい。それで貸しを作ったトラスタタルの兵を借りることに成功した奴らが、海路ウェルネス入りして反乱を起こしたのだ。」
「また、奇想天外な方法を採ったものですねえ。しかし、どうやって兵を運んだのです?」
「商業ギルド国の船を使ったらしい。そして商業ギルド国も軍兵であることを知らずに運搬したらしい。」
「何と言うことでしょう。そんなことするくらいなら、最初からザゴルと・・・」
「まあ、それで千人ほどがケンポールに上陸して暴れたそうだが、兄上の総督府軍で難なく鎮圧は出来たのだ。しかし、ウェルネスの王であった者をウェルネスの地でグラーツ人が討つとなるとなあ。」
「それはなかなか難しい事ですね。」
「そこでバーナード卿の一隊が突入して、王族を悉く討ったのだ。」
「それは・・・」
「ああ、卿としても覚悟の上であったろう。ウェルネス人の国を再興したいというのは、彼を含めた民族の悲願でもあるだろうからな。」
「その希望が無くなってしまいました。」
「ああ。だから余は、彼の覚悟にグラーツ人の王として応えねばならぬ。」
「だから大公なのですね。さすがです。しかし、バーナード卿が受諾するでしょうか?」
「させるさ。」
「それは・・・」
「案ずるな。だからこその大公よ。あくまで王ではない。」
「受け入れやすい条件の提示ということですね。」
「ああ、彼としてもウェルネス人や貴族を納得させる材料は欲しいだろう。それに、我が傘下として加わるなら帝国が文句なく後ろ盾になるし、アマーリアも文句は言うまい。」
「さすがです。落とし所としては絶妙です。」
ウェルネス人の国、かあ・・・




