家族欲張りセット
今日はローサの誕生日。昨日から今朝にかけて仕込みで忙しかったが、一家総出で今日に備えた。
オルガさんが亡くなってから元気が無いローサを励ますため、みんなで役割を決めて協力したのだ。
「さて、ヴィレ、フローレンス。お母様とお出掛けだ。カタリーナさん、アデ-レさん、後はよろしく。」
「はい、バッチリお任せください。」
「それにしても、昨日は公爵邸で何をされていたのです?」
「いやあ、帝都邸で何かをするとローサにバレちゃうじゃない。」
「それはそうですけど、マンフレートやイングリットにできることって?」
「そりゃあ、みんないないといけないこともある。さて、そろそろ着くね。」
「ここは・・・」
かつて一度だけ来た事がある、テーレ川の畔だ。
「アーニャさんと来たでしょ。」
「はい。新年にお食事に出た帰りです。ご主人様は今と変わらず、仲睦まじく歩いておられましたね。」
「ローサとアルマさんは、後ろで何やらヒソヒソ話しながら付いてきてた。」
「はい。とても初々しくて、こちらまで顔が熱くなっておりました。」
「ゴメンね。ローサと来るのに30年以上かかってしまった。」
「いいえ、それだけ長い時間、大切にされる妻は稀です。」
「見てよ、ヴィレとフローレンス。あの時の誰かさんみたいだよ。」
「ウフフッ、誰のことでしょう・・・」
そして、いつもの店で、いつものお茶を楽しむ。
「ここは、ご主人様と二人でお茶を飲むのも良し、こうして家族で楽しむのも良しですね。」
「そう、いろんな思い出がこの席には詰まっている。」
「ここのお茶の味は、あの時と変わりません。」
「そうだね。ローサはコーヒーを飲まないからね。それに、あのプラタナスの木も変わらない。」
「ええ、今日はとても明るく見えますね。」
「元気出たかい?」
「はい。ヴィレやフローレンスたちまで、こんなに頑張ってくれているのです。私も頑張らないといけませんね。」
「その意気だよ。じゃあ、私から私を含む4人へのプレゼントだ。」
「ええ?僕たちもですか?」
「みんながお揃いなことに意義がある。」
「家族みんなとお揃いなんて、初めてです。さすがはお父様。」
「さあ、開けてみて。」
「新しい手袋ですね。嬉しいです・・・」
うん、思い出の味も楽しめたし、掴みはOKだな。




