オルガさんの葬儀
翌日、マーブルク家の葬儀が執り行われる。
屋敷のメンバーはもちろん、マリアさんの子であるレミリアたち、セバスの娘さんであるコリンナさんたち、ヴィレたち孫とひ孫たちを、ゲルや団長らを含めるとなかなか賑やかな数になる。
ロスリー司教直々に葬儀を取り仕切る。そしてローサが長い祈りを捧げる。
挨拶はヴィレだ。
「本日は祖母、オルガ・マーブルク男爵夫人の葬儀に参列いただき、誠にありがとうございます。祖母は若くして家と両親を失い、苦労して今のマーブルクを復興させた一代の女傑であります。しかし、その人生の中で、物故された方を含む、ここにおられる皆様方のお力があったからこそでもあります。祖母はいつも皆様方への感謝を述べておりました。そして、今は皆様方の幸せを願ってくれているはずです。では、最後のお別れの前に、皆で祈りを捧げましょう。」
長い鎮魂の祈りを捧げる。
そして、私とヴィレが最初に棺に土をかける。次いで参列者皆で最後の別れを惜しむ。
「では父上、最後に一言、お願いでますでしょうか。」
「分かった。では、オルガさん、今まで本当にありがとう。我が妻ローサにとっては命の恩人であり、育ての母だが、私にとっても育ての母だった。これからも私たちを見守ってくれると嬉しい。そして、ここに来た時は、あらあらまあまあと優しく迎えて欲しい。それと、参列していただいた方々には私からも礼を言う。高齢の方も多いが皆、これからも長生きして、長くここを訪れ、故人を偲んで欲しい。今日は本当にありがとう。」
こうして葬儀はしめやかに終わった。
私たちは屋敷に戻り、応接室で一休みする。
「しかし、たくさんの人が来てくれたねえ。」
「はい。生前の祖母はあまり屋敷の外に出ませんでしたが、それでもたくさんのお知り合いがいたのですね。」
「全くその通りだ。最後に会いたい人には漏れなく会えただろうし、小さな子供たちの祈りは嬉しかっただろうし、聖女様直々の祈りで送られるなんて最高だと思うよ。」
「そうですね。向こうに行ってもマリアさんやセバスチャン殿、エラさんやコジマさんたちがおりますから、きっと寂しくないでしょう。」
「今頃きっと、ローサの話題で盛り上がっている頃だよ。」
「ご主人様・・・」
ローサはもうずっと憔悴したままだ。
「今日は本当によく頑張ったね。オルガさんに最高の恩返しができたはずだよ。」
「はい・・・」
「今はいいんだ。でも、いつかは笑顔に戻ってくれないと、オルガさんのことだ。きっと気に病んでしまうよ。」
静かに彼女を抱き寄せる。
本当に別れはいつも残酷だが、彼女には必ず乗り越えて欲しい。
今はただ、そう願うばかりだ。




