アウレリアの苦悩
テーレから帰って来たある日。
廊下の隅でアウレリアが・・・
「おや?アウレリア、どうしたんだい。アルマさんにでも叱られた?」
「お祖父様・・・ はい、お嬢様との歩き方で注意を受けてしまいました。」
「ああ、アルマさん、戻って来て早速、張り切ってるんだねえ。」
「お祖父様、私なんかでお嬢様の従者が務まるのでしょうか?」
「ああ~、従者の作法って難しいよね。特に城内のしきたりなんて、お祖父さんにもさっぱりだよ。でも、最初から出来る人なんていないんだよ。」
「グスッ・・・」
彼女の頭を優しく撫でてあげる。
「アウレリアを見てると、初めて会った頃のローサを思い出すね。お祖母様も、そうやってよく泣いてた。」
「お祖母様も、ですか?」
「お祖母様が小さい頃、大変苦労されたことは聞いてるね。」
「はい。聞いております。」
「うん。お屋敷のメイドさんから始めたんだけど、最初はよく叱られてたみたい。アルマさんだって、いきなりお城に行って、それはそれは厳しい訓練を受けたんだって聞いた。」
「みんな、大変だったのかなあ・・・」
「そうだよ。アルマさんだって、アウレリアがお城に行った後に困らないように、一生懸命教えてくれてるんだよ。アウレリアはお祖母様やお母様に似て、とてもいい子だから、きっと大丈夫だと思うよ。ただ、アウレリアだけに、こんな苦労させてしまって、本当に申し訳ないと思ってる。ゴメンね。」
「いいえ、それは仕方がないことです。イングリットにこんな思いして欲しくないし。」
「本当に優しくていいお姉ちゃんだ。こっちに来て、お菓子でも食べるかい。」
「うちが男爵家だから、避けられなかったことなのでしょうか・・・」
「その男爵の位は、お祖父ちゃんが陛下から直接貰った、とても名誉なものなんだよ。そして、それを使って、お祖母様を助けたんだ。私にとってはとても大切なものだよ。」
「そうなのですね。ごめんなさい。」
「うん、偉いぞ。私はアウレリアのひいおじいさんのセバスがお父さんだと思ってる。そしてマリアさんが、私のお母さんだと思ってる。」
「メイド長のお母さんですね。では、お祖父様のお父様とお母様はどうしたのですか。」
「父とはほとんど話をしなかった。母には会ったこともない。」
「お祖父様も大変だったのですね。」
「だからアウレリアもきっと頑張れる。とてもしっかりした強い子だから。」
「はい、ご心配をおかけしました。ありがとうございます。」
「そう言えば、秋には高級学校だね。プレゼントに何か欲しい物ある?」
「はい。」
「ようし、お祖父ちゃんが何でも買ってあげよう。アウレリアだけのプレゼントだよ。」
「ありがとうございます。お祖父様。」
典型的な孫をなだめるおじいちゃんだ・・・




